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AWSカーボンフットプリントツールでAWSリソースのCO2排出量をモニタリングする

ライター:吉田 将大
システムインテグレータでソフトウェア開発業務を経験した後、2018年にネットワンシステムズに入社。
前職での経験を活かした開発案件の支援や、データ分析基盤製品・パブリッククラウドの導入を支援する業務に従事。
保有資格: AWS認定ソリューションアーキテクトプロフェッショナル

目次

今回はAWSの「Customer Carbon Footprint Tool(カスタマーカーボンフットプリントツール)」についてご紹介します。

AWS カスタマーカーボンフットプリントツールは、利用しているAWSリソースの炭素排出量や、オンプレミスと比較した場合の炭素排出量の削減量などを可視化できるツールで、AWS利用者に無料で提供されています。

昨今、GX(グリーントランスフォーメーション)ESG投資SDGsというキーワードで環境保全に関する関心が高まっている中、ITインフラの電力消費に伴う温室効果ガスの排出が環境に与える影響は増加傾向にあり、企業にとって考慮すべき重要なポイントとなっています。

Amazon社では、2025 年までに再生可能エネルギーの使用率を 100% にする目標を掲げており、カーボンフットプリントツールはAWSをITインフラとして活用しているユーザに対して、カーボンニュートラルへの取組をアピールするための一施策となっています。

カスタマーカーボンフットプリントツールを使ってみた

AWSでカスタマーカーボンフットプリントツールにアクセスするには、AWSマネジメントコンソールにアクセスし、請求ダッシュボードから、「Cost & Usage Reports」タブを選択します。

タブを表示すると「顧客カーボンフットプリントツール」というセクションに各項目が表示されます。
炭素排出量の単位は全てMTCO2e(二酸化炭素換算トン)です。

  • 炭素排出量の概要
    選択した期間での炭素排出量と削減量です。
    「AWS推定炭素排出量」はAWS利用量から算出した推定炭素排出量です。
    「AWSで削減された排出量」は同等のオンプレミス環境と比較したときの推定炭素排出削減量です。
  • お客様の排出量の削減
    上記の「AWSで削減された排出量」の内訳です。
    「AWS 再生エネルギー購入から削減」は再生エネルギー利用による削減量です。
    「AWS コンピューティングサービスの利用による削減」はAWS クラウドインフラストラクチャのエネルギー効率による削減量です。
  • 地域別の排出量
    AWSリソースを配置している地域毎の炭素排出量の割合です。
    この情報は、AWS リージョン には対応しておらず、AMER、APEC、EMEA といったより広い地理的グループ単位の内訳となります。
  • サービス別の排出量
    「AWS推定炭素排出量」のAWSサービス毎の内訳です。
    2022年8月現在はAmazon Elastic Compute Cloud (EC2)、Amazon Simple Storage Service (S3)のみ個別で表示され、それ以外のサービスは全てOtherに含まれています。
  • AWSの炭素排出統計
    選択した期間での炭素排出量の推移です。
    グラフでは0.1以下の値は四捨五入されてしまっているようで、今回デモで使用したアカウントはAWS利用量が少なすぎたため、値が2021年2月のデータしか表示されていませんでした。

ちなみにツールのグラフ上は表示されていませんでしたが、グラフの元になっているjsonデータを直接Excelで可視化してみると0.1 MTCO2e以下の小さなデータも保持していることがわかりました。

ツールの活用方法と今後の展望

カーボンフットプリントツールの機能について簡単にまとめると以下のようになりました。

  • 最大過去2年分のAWS上の推定二酸化炭素排出量が可視化できる
  • オンプレミス→AWS移行による排出量削減の目安がわかる
  • 削減量の内訳(再生エネルギー利用によるものか、インフラのエネルギー効率によるものか)がわかる

今後ユーザが利用できるAPIなどが開発され、より詳細なサービス・リージョン単位の炭素排出量などが取得できれば、

  • 炭素排出量が多いサービスやリージョンなどを分析してアラートを上げる
  • 過去のデータから今後の炭素排出量を予測する
  • リソースを、より炭素排出量が少ないリージョンに自動でマイグレーションする

などの仕組みの実装ができ、カーボンニュートラルに最適化された未来のITインフラを実現できるのではないかと考えました。

これらが実現できたら、顧客や投資家に対して大きなアピールポイントになりそうです。

まとめ

今回はAWSのカスタマーカーボンフットプリントツールをご紹介しました。

無料で提供されているのでAWSをITインフラとして活用している方は、まずはツールを使って現在の炭素排出量を確認するところから環境保全への取組を始めてみるのはいかがでしょうか。

今回はAWSのツールをご紹介しましたが、Microsoft AzureやGoogle Cloud Platformなど、他のパブリッククラウドプロバイダーも同様の機能を提供しています。

各ベンダーのツールの機能を比較してみるのも面白いかもしれません。

引用元: Customer Carbon Footprint Tool の理解

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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