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ロボット導入時の 4つの潜在課題

ライター:東根 真司
2006年 ネットワンシステムズに入社。セキュリティ、ロードバランサー、IoTを中心としたプロダクトマーケティングを経て、2017年よりシリコンバーにある Net One Systems USAにて駐在を経験。現在は新規事業の企画から立ち上げに従事。

目次

 前回の記事では、ロボット市場の概要やスタートアップへの投資を中心にご紹介しました。本記事では、ロボットを導入する上で見落とされがちな 4つの潜在的な課題、及び IT部門として考慮しておくべき事項についてご説明します。

ロボット自身への課題にシフト

 ロボットを導入する目的としては、生産性向上による自動化やコロナ禍での省人化など多種多様です。基本的な導入の流れとしては、現在直面している課題を洗い出し、その課題を解決できるロボットを選定し、ロボットが実際に目的通りに稼働するか実証実験を行い、問題なければ本番稼働、そして台数や稼働場所を拡大していくといった手順を踏むかと思います。

 この流れのなかで、現在ロボット導入を検討されている多くのお客様は、上記図の ①現状の課題整理、②PoC:実証実験 のフェーズが多く、「業務をロボットで代替えできるかどうか」「ロボットを導入することで ROIをクリアできるか」を検討されています。しかし、今後 ③本番導入、④拡大展開 のフェーズに移行すると、業務を解決するために導入した「ロボット自身の課題」へと問題がシフトしていきます。

具体的な4つの「ロボット自身の課題」

  • ロボット間 / 他システムとの相互連携
  • ロボットが最大パフォーマンスを発揮するための最適なネットワーク
  • ロボットに特化したセキュリティ
  • ロボットの一元管理による運用効率化 RobOps

 これら 4つの項目について説明します。

ロボット間 / 他システムとの相互連携

 現在のロボットは特定の作業や用途において設計されていることが多く、一台で様々なタスクをこなせるわけではありません。一方で自動化や省人化を実現するには、一種類のロボットだけではなく、異なるベンダーの異なるタイプのロボットを組み合わせることで大きな効果を得られます。また、ロボット同士だけでなく他のシステムとの連携が必要になります。例えば、館内を走行するロボットであればセキュリティゲートやエレベータ、倉庫などの自動化だれば WMS(Warehouse Management System)などとの連携です。ここで重要になるのが、ロボット間、ロボットとシステム間を繋ぐ API、及びプラットフォームです。米国シリコンバレー スタートアップの一社である InOrbit社では Developer Portalという、API や SDKなど ノーコードでロボット、他システムを繋ぐための機能が提供されています。

ロボットが最大パフォーマンスを発揮するための最適なネットワーク

 ロボットは常に自分の状態を共有し、コントローラーからの命令をリアルタイムに受けとる必要があるため、常時ネットワークに繋がっていることが前提となります。そうすることで、ロボットが最大のパフォーマンスを発揮することができます。このロボットが繋がるネットワークは、ロボットの種類や環境によって求められる要件が異なり、ネットワークの構成も大きく変わってきます。産業用ロボットの場合、高い信頼性とレスポンス性能が求められるため、遅延は許されません。これを実現するために「フィールドネットワーク」という標準的な考えがあります。一方で 最近台頭してきたサービスロボットにおいては、産業用ロボットほど要件が明確化されず、ネットワークに繋がれば良いという考えが横行していると感じられます。特に動き回ることが前提であるロボットの場合、正しく無線の設定を行わないとハンドオーバーが上手く行われず、通信断が発生しロボットがスタックする事象が発生します。また、ロボットに最適なネットワークを実現するには、「ITネットワーク」と「OTネットワーク」の両方の知見が必要になります。我々は ITネットワークだけでなく、数年前よりスマートファクトリを中心に OTネットワークへのビジネスも拡大し、両方の知見を有しています。

ロボットに特化したセキュリティ

 ロボットがネットワークに繋がるということは、それだけ攻撃のリスクに晒される危険性が高まります。また、今後 「ロボット」 と 「IoT」の融合による「Internet of Robotics Things」 として、動き回る高性能なセンサーと化し、現実世界の様々なものをセンシングすることになります。これにより、更に機密性の高い情報を収集することが出来る一方で、これらの重要なデータを狙ったロボットへのハッキングリスクが膨らみます。特に、人と共存するサービスロボットは、人と近い場所で動いています。これは IT機器がサーバールームにあるのとは違って、例えばUSBポート等に物理的にアクセスされる危険性があることを意味しています。また、データを搾取されるだけでなく、ロボットが乗っ取られてしまうと、人に危害を加えてしまう可能性も出てきます。

 では、ロボットに対してどういったセキュリティを提供すればよいのでしょうか。ロボットも ICTと同じ様に、脆弱性検査・リスク分析、ロボットに特化したセキュリティ対策、そして運用が必要になってきます。スペインに本社をおく Alias Roboticsのように、ファイヤーウォール、アンチウイルス、データ暗号化など、ロボットに特化したエンドポイント・プロテクション・プラットフォームを提供するスタートアップも現れています。このようなロボットに特化したセキュリティ対策を全体のセキュリティ提供プロセスに組み込んでいくことが必要となるでしょう。

ロボットの一元管理による運用効率化 RobOps

 今後、ますます多種多様なロボットが世の中に現れ、それらを導入する顧客の数も増えていきます。その際に、いかに効率よくロボットをスケールさせ、なおかつ、導入したロボットの運用管理を最適化するかが重要になります。そこで注目を集めている新しいテクノロジーが RobOpsです。RobOpsとは大量の異機種ロボットを管理運用する仕組みを言い、この RobOpsのソリューションを入れることで、コストを抑えながらスケール・運用の容易性を実現することが可能です。RobOpsについては、こちらの記事 や RobOpsのユースケースとしては、こちらでも取り上げているので興味がある方はご覧ください。

まとめ

 ロボットは新たな社会を築く上でより一層大きな役割を担っていきます。特にサービロボットに関しては、新たな機能を持ったロボットが続々とリリースされていますが、現時点ではロボットを提供するベンダー側もロボットを利用するユーザ側も顧客課題を解決できるかという点に注力しています。しかし、ロボット利用が進むと、今回ご紹介した新たな課題が浮上します。その際には社内のシステムや技術的な知見がある IT部門が欠かせない存在になります。そのため、ロボット導入の初期フェーズから、IT部門の積極的な関与、及び 4つの課題を意識しながらロボットプロジェクトを進めることが重要になります。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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