
- ライター:知念 紀昭
- メーカーで生産ライン業務を経験後、製品の評価・設計を担当。
その後SIerでシステム設計構築業務を経てネットワンシステムズに入社。
入社後は仮想化ハードウェア・ソフトウェアの評価・検証業務、クラウドソリューション業務などを担当。
現在は、主にデータの利活用・機械学習ビジネスを推進している。
目次
社内データを活用したデータ分析プロジェクトの推進
近年、業種を問わず様々な産業でデータ活用が広がりつつあります。過去にお客様データの収集・加工・蓄積し機械学習を用いた分析案件をお手伝いしてきましたが、あらゆる部署が様々な課題をデータ分析で解決できる可能性を秘めていると実感しました。そこでネットワンシステムズの各部署内にも潜在的にデータ分析で解決できる課題が多くあるのではないかと考え、2020年度より本格的に社内データを活用したデータ分析プロジェクトをいくつか発足しました。本プロジェクトのゴールは次の2つです。
1. 各部署が持つ企業活動データの分析を実施し、分析結果をビジネスへ活用します。
2. データ分析活動を組織横断で実施し、全社的なデータ分析スキルの向上とデータ分析の民主化を図ります。
データ分析案を社内公募
潜在するデータ分析のニーズを汲み取るため、社内ポータルサイトにアンケート形式でデータ分析案の募集記事を掲載しています。アンケート項目は、分析テーマと目的と期待される結果などです。また気軽に記入できるように、応募したからと言って必ず実施しなければいけないわけではないという注意書きを加えています。

図1:データ分析案募集
集めたデータ分析案の中から、技術面と情報セキュリティ面からデータ分析の可能性を吟味し、得られるビジネスインパクトの大きさと照らし合わせて、見込みのあるものについてはプロジェクト化し、データ分析を実施します。

図2:データ分析プロジェクト活動開始までのフロー
データ分析プロジェクトを発足
データ分析のプロジェクト化が決まった案については、組織を横断したデータ分析チームを発足して分析活動を行います。分析活動が成功しやすいチームのフォーメーションは主に4つのロールのメンバーで構成されることが経験的にわかってきました。まず一つ目のロールは「データ分析の実施」です。多くのプロジェクトでは基本的には発案者とその同志の複数名で分析を行います。二つ目のロールは「データの抽出&データ理解サポート」になります。三つ目のロールは「ビジネスの観点から分析レビュー」になり、分析対象データの実業務に詳しい部署の方々を選出しました。仮説立案や展開案の多くをこのロールの方々から頂いています。四つ目のロールは「分析プロジェクトマネジメント」になり、プロジェクト企画運用と分析スキルトランスファーをデータ分析に長けたメンバーで実施しています。

図3:データ分析チーム
比較的短期間で成果の得られたプロジェクトの一例では、約4カ月で完結しました。内訳はデータ精査とスキルトランスファーと分析基盤構築で1カ月弱、実際の分析作業で2カ月程度、活動総括と社内発表で1か月となります。

図4:分析スケジュール例
CRISP-DMに沿ってデータ分析を実施
実際のデータ作業は、データマイニングの標準的手法であるCRISP-DM(Cross-Industry Standard Process for Data Mining)に沿って、試行錯誤して最適な結果を求めます。データ分析の専門家がビジネスの理解とデータの理解を行う際には、対象ビジネスの実務を行っている方からヒアリングを行うなどして多少時間をかける必要があります。それに対して対象ビジネスの実務を行っている方が実際にデータ分析を行う場合には、既にビジネスの理解とデータの理解が行えている場合が多く、またビジネスの観点からモデルの評価や展開なども行えます。その点においてデータ分析の民主化は、データ分析の専門家に分析業務を任せる場合よりも優位性があると言えます。

図5:CRISP-DM
データ分析に使用するツールはデータ分析の内容によって適したものを選択します。数値データ分析でより複雑で多くの前処理が必要な場合には、可読性が良くチーム内で情報共有が容易なRapidMinerなどのGUI分析ツールが適しています。
ネットワンシステムズ社内のデータ分析事例
アンケート形式でニーズを汲み上げた案以外にも、個々に相談を受けてデータ分析プロジェクトを発足した例がいくつかあります。それらのデータ分析事例のいくつかをご紹介します。これら他にもいくつかの相談を受けており、今後もデータ分析プロジェクトが発足する予定です。
表1:ネットワンシステムズ社内のデータ分析事例
分析活動事例 |
課題・やりたいこと |
顧客満足度分析 |
あらゆる事業データから、顧客満足度向上の要因を分析し、顧客満足度向上施策へつなげる |
製品毎の受注相関分析 |
製品の受注相関関係を提示し、売上向上に貢献する |
お客様からの保守対応データと受注データを用いた製品分析 |
各製品の保守QA&保守対応データの可視化と要因を分析し、保守活動に貢献する |
お客様からのQA対応データに基づく営業活動提案 |
事業部QA対応データを分析し、教育メニュー提案や製品提案などの営業活動へ活かす |
自社のビジョン浸透分析 |
ビジョン浸透とブランディング向上 |
過重労働対策 |
あらゆる事業データから、過重労働の要因を分析し、過重労働低減施策へつなげる |
システム構築時のトラブルナレッジ分析 |
案件対応でシステム構築時に生じるトラブルナレッジ要因を分析し、トラブルを減らす施策へつなげる |
社員向け社内システムQAナレッジのFAQ作成支援 |
社内のQA対応ナレッジ活用しFAQ作成を支援する |
社員向け保守QAナレッジのFAQ作成支援 |
社内のQA対応ナレッジ活用しFAQ作成を支援する |
最後に
ネットワンシステムズでは、各部署に潜在するデータ分析のニーズを引き出し、データ分析の民主化を行うことにより、ビジネス競争力の向上を目指しています。既にいくつかの成果が出ており、今後ご紹介いたしますのでご期待ください。
参考文献
- なし
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。