
- ライター:工藤 聖乃
- 2020年ネットワンシステムズに新卒入社。
新製品の技術検証、新技術を組みあわせた新しいソリューション開発や検証業務に従事。
目次
はじめに
COVID-19の影響によりテレワークが推奨され、通勤時間が減少し、一日中家で過ごす機会が多くなり、外出の機会が減少している人が多くなりました。これらの影響により、運動不足を感じる方が増えているのではないでしょうか。運用不足から身体的疲労が無く、眠気が誘発されづらくなり、結果として睡眠の質が下がることが推測されます。
“睡眠不足は生活習慣病のリスクを高めます。毎日の睡眠時間が短く、慢性的な睡眠不足状態であると、意欲の低下や日中の眠気、抑うつ、注意力の低下、倦怠感などが起こり、作業効率の低下やミスにつながるばかりでなく、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも影響することが言われています3)。”
(引用元:健康長寿ネット:睡眠と健康長寿の関係「睡眠不足の健康リスク」睡眠と生活習慣病 ,2021/9)
このようなリスクを軽減するためにも、日々の睡眠のデータを取得し測定をおこない、健康を維持することが大切です。
睡眠データを取得するウェアラブル端末は、現在数多く販売されています。その中でも睡眠の邪魔をしないデザインと豊富なAPIによって詳細なデータを取得でき、スマホのアプリから簡単にデータを確認できるといった優位点を持つOura Ringを使用した結果をまとめました。
Oura Ringとは?
心拍数等、身体のさまざまな信号を測定することにより、ライフスタイルの改善方法についてガイダンスを提供する先端ウェアラブル端末です。

図 1. Oura Ringの実写真
チタン:耐スクラッチDLCコーティング 100% 医療グレードのシームレス/非アレルギー性インナーモールディング 心電図レベルの休息心拍数(RHR)、心拍インターバル(IBI)および心拍変動(HRV) 呼吸数、呼吸数変動 温度計精度の体温偏差 動き/毎日のリズム 身体活動アクティビティの強度、タイミング、長さ アラートを含む非アクティブ時間、座っている時間 1回の充電で最大1週間使用可能 サイズ:6,7,8,9,10,11,12,13 |
(引用元:ŌURA Spec 原文英語, 2021/8)
表 1. 取得しているステージと説明
ステージ | 説明 |
睡眠段階 | 個々の睡眠構造、睡眠段階の構造とパターンを把握可能 |
安静時心拍数 | 夜間の安静時の心拍数、回復、睡眠の質および全体的な健康の指標を把握可能 |
心拍変動 | 運動、ストレス、疲労から体がどのように回復するかを示す指標である心拍変動をトラッキング |
身体温度 | 夜間の体温がどのように変化するかを学ぶことで休憩のタイミングや病気の予防につながり、月経周期のステージを把握しやすくなります。 |
- 実際の画面(iPhone)
図 2. 実際のスマートフォン画面
- APIで取得できる値について
Access Token取得方法

図 3. APIの取得方法
※ 1デバイスにつき1アカウント必要
表 2. 調査したAPI・説明
睡眠、活動にまつわるAPI |
説明 |
・Readiness Summaries API |
その日のコンディションが良いか(前日から回復しているか)を判定 85% 十分に回復 70%未満 体温、昨日の睡眠などが(低い) start と end を指定可能( YYYY-MM-DD ) |
・Sleep Periods API |
検出した睡眠期間ごとに分析を実行し、測定パラメータを保存 start と end を指定可能( YYYY-MM-DD ) 睡眠時間は秒単位 |
・Sleep Periods API |
検出した睡眠期間ごとに分析を実行し、測定パラメータを保存 start と end を指定可能( YYYY-MM-DD ) 睡眠時間は秒単位 |
・Activity Summaries API
|
活動情報を取得する API 毎日のアクティビティの値と、レベル(MET[1] mins)で表される アクティビティスコアとは・・過去1週間のアクティブ度の全体な指標 start と end を指定することが可能 |
[1] メッツ / METs
“運動強度の単位で、安静時を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示したもの。
メッツとは運動や身体活動の強度の単位です。
安静時(横になったり座って楽にしている状態)を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示します。”
(引用元:厚生労働省 e-ヘルスネット, 2021/9)
装着検証
Oura Ringのデータが、実際にどのように取得できるのか確認を行いました。
表 3. 調査内容
期間 |
2021年4月27日~5月10日 |
基にしたデータ |
Readiness Score[2] Sleep Score[3] 睡眠時間 体表温度(℃) 呼吸速度(/分) |
独自に取得したデータ |
体感ストレス 値就寝前・起床時(5段階) 起床時体温(体温計にて計測) |
[2] このスコアが高いとコンディションが回復している
[3] このスコアが高いと睡眠の質が高い
表 4. 調査結果
◇Activityについて
・相対的に睡眠時間が少ないとスコアも低くなる傾向にあるが、体調を崩した際、少なくはない時間(7時間以上)寝ているにも関わらず59というスコアとなった
・一日に500歩以上歩く必要があり、満たさない場合スコアが表示されなかった
◇READINESSについて
・READINESSのスコアが高くでていても、体感では疲れて感じる日が多かった
・体調を崩した際READINESSのスコアがかなり下がることが分かった(図4)。実際に体調が良くなるにつれてこのスコアが高くなることが確認でき、実際に回復に向かっていることがデータで可視化することができた
図 4. 体調を崩した日(5/8)のスコア(多くの数値が注意に)
まとめ・所感
体調を崩した日、実際の症状としては軽い頭痛と気怠さがあり、少し体調が悪いなといった程度で熱っぽさはありませんでした。しかし数値を確認すると、スコアだけでなく呼吸速度がかなり速くなっていることがデータとして確認することができ、体調を崩していることに、その時気が付きました。病気が流行ってしまう要因の一つに発症前に他人に感染させる人や、無症状の人が知らず知らずのうちに感染させてしまうケースが見受けられます[4]。
今回のように自分に自覚がなく体調を崩している場合、データを確認してようやく体調が悪いことに気づき、「外出を控え、極力人に合わないようにしよう」といったマインドになるのではないでしょうか。
また、睡眠時間に関しても実際詳細な時間が明示されることで、朝その数値を確認することで、充実感が得られました。あらためて数値化をおこない、見直すことで自分の体のコンディションを理解することができます。
健康の観点だけでウェアラブル端末を使用するだけでなく、生活の質を上げることで作業効率アップを目指せるよう今後のプロトタイピング活動に繋げていきます。
[4] 参考:NIKKEI STYLE
参考リンク
・Oura Ring商品ページ
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。