
- ライター:金只 圭司
- 2008年にネットワンシステムズに入社。
入社当初からストレージ製品技術担当として様々なストレージ製品の検証、技術支援を行っている。最近はハイブリッドクラウド、マルチクラウド環境におけるデータのあり方を模索中。
目次
バックアップにおけるクラウド活用の第一歩
こんにちは。
近年、ランサムウェアの被害など国内でも広がってきており、データ保護の重要性がさらに増してきています。また、データのバックアップ先としてクラウドの活用も広がりを見せており、今やバックアップ製品でバックアップストレージとしてAWSやAzure上のオブジェクトストレージを指定できない製品はないのでは? と思うほど、各社で実装が進んでいます。
そこで、今回の記事では、バックアップ先としてのクラウド利用、及びVeritas社のNetBackup製品の最近のアップデートでクラウドへのバックアップが簡単になりましたので、これらについてご紹介いたします。
バックアップにおけるクラウド活用のメリットとユースケース
クラウド上のストレージに対してバックアップを検討する理由として、主に以下の例が挙げられます。
- AWS S3やAzure Blobなどのオブジェクトストレージが比較的安価
- AWS S3やAzure Blobでオブジェクトロック(WORM機能=データの変更、削除させない機能)が実装され、ランサムウェア対策としても利用可能になった
- ネットワーク疎通さえあれば利用可能
- バックアップストレージのインフラ管理をしなくてよい
- 災害対策用に別途データセンターを契約、管理しなくてよい
- 利用の開始と終了を迅速に行うことが可能
上記の理由からクラウドでのバックアップの利用を検討されるお客様が多いですが、その中でも以下の2つが最初に検討されやすいユースケースです。
①テープの代替手段としてのクラウド活用
テープ装置も未だに性能向上していることや安価であるなどのメリットもあるため、昔ながらとはいえまだまだ多くのお客様がテープバックアップを採用されています。しかし、物理的に管理が必要となる点や遠隔地へのテープの輸送など、独自で考慮すべき事項があり、やはり管理面で難点となることも多くあります。そこで、従来のテープバックアップの代替手段として、安価なクラウドのオブジェクトストレージを利用することが、1つのユースケースとして挙げられます。
②災害対策としてのクラウド活用
オンプレ環境の本番データをクラウド上のストレージにバックアップすることで、災害対策として活用できます。オンプレ環境(データセンターなど)が災害時に本番データが失われても、クラウド上にバックアップデータがあることで、データを復旧することができます。物理的に複数のデータセンターを必要としないため、管理、運用のコストも抑えた災害対策構成のユースケースです。
クラウド利用時の注意事項
- クラウド上のオブジェクトストレージはたしかに安価に利用できますが、コスト的にオンプレで組んだ構成よりも必ず安くなるかというと、一概には言えません。環境や条件などによりますので注意が必要です。そのため、コスト以外にクラウドのメリットを本当に享受できるかをしっかり検討することが重要です。
- ネットワークのパフォーマンスにもよりますが、遅延等によりバックアップ/リストアの性能が問題になるケースがあります。特にリストアが遅くなることで単純にデータ復旧が遅くなり、RTO要件を満たせなくなる可能性があります。そのため、①②どちらの場合においても、1次バックアップはオンプレのストレージに取得し、2次バックアップとしてのクラウド利用がおすすめです(図1)。
図1.クラウドストレージへのバックアップ
Veritas NetBackup単体でクラウドにバックアップ可能に!
弊社でもVeritas NetBackup製品を取り扱っておりますが、昨年2020年7月にリリースされたver8.3 から、MSDPクラウドという機能が実装され、クラウドへのバックアップがNetBackup単体で可能になりました。
従来までは、NBU/Flexアプライアンスや仮想/物理サーバ上にCloud Catalystというインスタンスを作成し、そのCloud Catalystの機能を利用して、AWS S3やAzure Blobなどにバックアップを行っていました(図2)。
図2. NetBackupのCloud Catalyst経由のクラウドへのバックアップ(製品のモデル名は例として記載)
Veritas NetBackup ver8.3以降では上述のMSDPクラウドの機能により、Cloud Catalystを別途用意する必要がなく、NetBackupから直接AWS S3やAzure Blobにバックアップすることが可能になりました(図3)。構成がシンプルになったことにより、さらにクラウドへのバックアップも検討しやすくなりました。
図3.NetBackupから直接クラウドへのバックアップ
すでにNetBackupをご利用のお客様もバージョンアップすれば、この恩恵を受けることができますので、これを機にクラウドへのバックアップをお試ししてみては如何でしょうか。
まとめ
今回の記事では、バックアップにおけるクラウド利用と、Veritas社のNetBackup製品のクラウド対応のアップデート情報についてご紹介しました。弊社ではVeritas社のNetBackupをはじめ、様々なバックアップ製品を利用したクラウドへのバックアップ機能の検証を行い、最適なソリューションを準備しております。まだまだクラウド利用に懸念を持たれている方も多いとは思いますが、まずはクラウド活用の第一歩として本記事がお役に立てましたら幸いです。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。