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AWS環境のバックアップについて(Veeam Backup for AWS)

ライター:渡辺 義和
2002年 ネットワンシステムズ株式会社入社

主にクラウド、バックアップ、モニタリング製品等の技術支援を行っている

・AWS 認定ソリューションアーキテクト プロフェッショナル

目次

クラウド環境のデータ保護の必要性

日本国内でもクラウドの利用が年々進んでいますが、クラウドのバックアップはどうされていますでしょうか?

例えばAWSを利用する場合、責任共有モデルにより、データ保護を行う責任主体はクラウド事業者ではなくユーザー側にあります。こうした考え方は他のクラウドベンダーでも同じです。このため、稼働しているインスタンス等、重要なITリソースがパブリッククラウドにある場合、ユーザーが主体となって必要なデータ保護の施策(バックアップ等の計画)を講じる必要があります。今回はそうした役割を担うプロダクトの1つである、Veeam Backup for AWSに触れる機会がありましたので、こちらについて簡単にご紹介していきます。

Veeamとは?

具体的な内容に入る前に、少しVeeamについても触れさせて頂きます。

Veeamとは、バックアップと復元ソリューションを提供する企業で、2020年版ガートナーマジック・クアドラント レポートのデータセンターバックアップ/リカバリーソリューション部門で4度目のリーダーにも選出されている、バックアップ業界のリーディングカンパニーです。

Veeamと言う会社名を聞いた事がある方は、主に仮想環境のバックアップをする会社として認知されているかも知れません。実際、Veeam Backup & Replicationというバックアップ向けの商材がVeeamのメインプロダクトとなっており、仮想環境のバックアップが得意である点はその通りなのですが、ここ数年はクラウド・データ・マネジメントというコンセプトを打ち出しており、物理、仮想、クラウド等、インフラの環境を問わずデータ保護を提供し、ワークロードのポータビリティを実現する方向へと年々進化を続けています。昨年はKubernetes環境をバックアップするスタートアップであるKastenを買収し、コンテナ等、アプリケーションの領域にまで範囲を広げています。

今回ご紹介する Veeam Backup for AWSは、AWSのネイティブな機能も活用しながらAWS上のリソースに対するデータ保護を提供するプロダクトになります。

Veeam Backup for AWSを使うメリットとは?

AWSを利用されている方はご存じかも知れませんが、AWSにもAWS BackupというAWSのリソースをバックアップするためのサービスが既に存在しています。クラウド事業者が自らバックアップサービスを提供している中で、敢えて、Veeam Backup for AWSの様な3rd Party製のバックアップツールを使うメリットがどこにあるのか、もしかしたら疑問に持つ方もいらっしゃるかも知れません。

個人的な感想にはなりますが、メリットになりそうなポイントを幾つか挙げてみたいと思います。

①UIがシンプルで直感的に分かり易い

実際に触ってみた感想として、Veeam Backup for AWSのUIはシンプルで直感的に分かり易いと思います。バックアップのスケジュールなどもグラフィカルに設定可能で、万人が操作し易い作りになっています。

また今回紹介しているのは、Veeam Backup for AWSというAWSに対応したプロダクトになりますが、Azureに対応したプロダクト(Veeam Backup for Azure)もGoogle Cloud Platformに対応したプロダクト(Veeam Backup for Google Cloud Platform)もリリースされており、基本的なUIの構造は統一されているため、今後、複数のクラウドを平行利用する様なマルチクラウドの構成に移行した場合でも、バックアップにVeeamを利用する事でバックアップ操作における運用の学習コストを下げる事が期待出来るかも知れません。

②バックアップに必要なコストが推定可能

Veeam Backup for AWSの特長として、バックアップポリシーを定義する過程で、どんな頻度で復元ポイントを取得するかスケジュールを設定する事が出来、その内容に応じてどれ位の費用が掛かりそうか、概算コストが表示されます。

データ保護の観点から言うと復元ポイントが多い事に越した事はないかも知れませんが、コストの側面から考えると復元ポイントが増えれば増える程、それだけクラウドの利用コストも増加します。

バックアップポリシーを定義する過程で概算コストが推定出来る様に工夫されている事で、利用者は、データ保護の品質とコストのバランスを意識しながらバックアップポリシーを比較検討する事が出来ます。

③VPCのバックアップが可能

どの様なAWSサービスをバックアップ出来るのか、という観点で比較すると、現時点でAWSが提供するAWS Backup では、合計8つのサービス(EBSボリューム、RDSデータベース、Aurora クラスター、EC2インスタンス、DynamoDBテーブル、EFSファイルシステム、Amazon FSxファイルシステム、Storage Gatewayボリューム)をバックアップする事が出来ます。

一方でVeeam Backup for AWSでは、合計3つのサービス(EC2、RDS、VPC)をバックアップ対象としていますので、単純に対応するサービスの数的にはAWS Backupに軍配が上がります。

但し、Veeam Backup for AWSでは、AWS Backupでバックアップすることが出来ないVPCがバックアップ対象に含まれておりますので、その点はVeeam Backup for AWSを利用する1つのメリットにはなるかも知れません。

④VBRとの組み合わせでワークロードのポータビリティを実現

Veeam Backup for AWSではバックアップの手法としてAWSネイティブなスナップショットの他に、Veeam独自のイメージレベルバックアップをEC2インスタンスに適用する事が可能です。イメージレベルバックアップはVeeam独自の形式のため、Veeam Backup & Replication(VBR)と組合せる事で取得したバックアップファイルを環境を跨いで利用する事も出来ます。

例えば、EC2のバックアップファイルをオンプレの仮想環境にリストアするとか、その逆に、オンプレの仮想環境で取ったバックアップファイルをクラウドにリストアする事が可能になります。

国内のクラウド利用では、まだ特定のクラウド事業者を選定した上で1社に絞って利用を開始するケースが多いかと思いますが、昨今、クラウド自体の障害でサービスが停止する事例も複数報告されていますので、こうした点を踏まえて今後マルチクラウド化が進んでいくと、環境を跨いだワークロードの移動も将来的にカギになってくる可能性があります。こうした点も、Veeamの様な3rd Party製のバックアップツールを利用するメリットではないかと思います。

まとめ

今回は、Veeam Backup for AWSを通じて、クラウドのバックアップやAWS環境においてVeeam Backup for AWSの様な3rd Party製のバックアップツールを使うメリットについて考えてみました。

最後のメリットの項目でも触れた通り、Veeam Backup & Replication(VBR)と組合せ利用する事でオンプレとクラウド間をシームレスに利用する事も出来ますので、Veeam Backup & Replication(VBR)の利用も併せてご検討頂ければと思います。

参考リンク

Veeam Webページ

Veeam Backup for AWS 製品ページ

Veeam Backup & Replication 製品ページ

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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