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社内会議室のCO₂分析に挑んでみた話~前編~

目次

COVID-19の影響で換気の重要度が変わってきました。

今回の記事は前編と後編に渡ってお届けします。前編は今回の取り組みの背景や、CO2濃度(ppm)と換気の関係性、弊社で取り組んでいる密検知システムについてご紹介します。

取り組みの背景

昨今COVID-19の影響により、3密(密閉、密集、密接)に対する意識が強まっていますが、特に、会議室は企業の中でも3密になりやすい場所とされています。

厚生労働省の「職場におけるCOVID-19の拡大を防止するチェックリスト」によると、対策の1つとして定期的に換気をすることが望ましいとされています。

また、従業員に配慮をした環境指標の1つとしてビル衛生管理法によると、CO2濃度(ppm)は1000ppm以下が望ましいとされています(ビル衛生管理法(厚生労働省))。

多くの企業はビルやフロアごとに管理していることが一般的ですが、社員の健康を考慮すると密閉された会議室単位でもCO2濃度(ppm)が一定基準以下に保たれているか管理することが重要です。

弊社ではセンシング技術によるオフィス管理、会議室の有効活用の一環として温度・湿度・人感だけでなくCO2濃度(ppm)も測定し、リアルタイムで可視化しています。

このデータを用いて、1人当たりの排出するCO2濃度(ppm)を測定し、スマートライトを光らせることで換気のタイミングを知らせるシステムを構築しました。

1人当たりの排出するCO2濃度(ppm)を算出し、会議が行われた際にその値よりも高くなった場合にアラートを出し、空気が悪くなってしまっているということをアラートする仕組みになっています。

データ収集の構成(使用した機材・ソフトなど)

使用機材

今回使用したセンサーは全てセイコーインスツル社のセンサーとなります。

今回セイコーインスツル社のセンサーを導入した理由として、以下のことから選定いたしました。

・電池式で10年持つ

・電池式なので配線工事が不要

・検証した際に親機から距離があっても無線が届いた

・障害物に強い

実際にセンサーを設置する前に電波強度を社内で試しました。

人感センサー(型番:SW-4220-1010

引用元:https://www.sii.co.jp/wsn/product/passive.html

  • 特徴

・内蔵焦電型赤外線センサーで人を検知、検出回数をホストへ送信できます

・電池駆動により、電源の無い場所にも設置可能です

・センサーの検出距離は5mまで対応できます

CO2センサー(型番:SW-4230-1000

引用元:https://www.sii.co.jp/wsn/product/co2.html

  • 特徴

・内臓CO2センサーでCO2を検知、計測データを無線ネットワークでホストに送信できます。

・ワイヤレスにより、有線ネットワークに比べて簡単・低コストで導入可能です。

・測定環境のCO2濃度(ppm)に関わらず11回自動補正を行うため、メンテナンスの手間を低減します。

・設置する高度を入力することにより、設置高度の補正が可能(11,500m)

使用ソフト

・Outlook:対象会議室の対象時間で会議が行われていたか確認

・Elastic Stack

  - LogstashCSVファイルをJSON形式に変換し、Elastic Searchに転送

  - Elastic Search:データをサーバに蓄積

  - KibanaElastic Searchに蓄積したデータを可視化

使用データ

平日

  • データ期間

20192月~20204

  • データ量

・前処理を行い合計で162

  • 対象

9:00~10:001日の中で1番最初の会議室状況

  • 手法

・開始時のppm

・開始後10分、終了前10分それぞれの最大値・最小値

・平均値を取得

休日

  • データ期間

20197月~201912

  • データ量

・合計で52

  • 対象

9:0010:00の人感センサーの反応していない土日の会議室状況

  • 手法

・土日の9:00~10:00で人感センサーの反応していないデータを確認

・開始時のppm

・開始後10分、終了前10分それぞれの最大値・最小値

・平均値を取得

今回の取り組みの進め方

今回の取り組みの進め方を大きく分けると4工程です。

Outlookで会議状況と情報の確認

②収集したデータと手作業で抽出した会議室予約状況との紐づけ

③前処理・分析

④分析結果からの考察

以上の工程を繰り返し行い、今回の取り組みを進めていきました。

以下で各工程について具体的にどのようなことを行ったか記述しています。

① Outlookで会議室予約状況と情報の確認

Outlookの予定表で今回対象とした会議室の予約状況と情報の確認を行いました。

収集したデータと手作業で抽出した会議室予約状況との紐づけ

Kibanaで可視化したデータとOutlookの会議室予約状況を照らし合わせ、CO2濃度(ppm)と人感センサーのデータから実際に会議が行われていたかを判断し、使えるデータと判断したものを手作業で抽出いたしました。

前処理・分析

こちらの項目の前処理については次項「データの外れ値除去(前処理)」と後編の記事にて紹介しております。

④ データ可視化の考察

分析結果からそもそも分析に使うデータとして適しているかや、データ量は足りているか、今回試した分析方法ではなく、違う分析方法の検討などを行い、満足した考察が得られなかった場合は「①Outlookで会議室予約状況と情報の確認」に戻り、満足いく結果が得られるまで進めました。

データの外れ値除去(前処理)

こちらのグラフをご覧ください。

図1 人数と会議の開始時CO2濃度(ppm)量の推移、緑線は増加量の予測、赤とオレンジの丸は注目してほしい点を表す

図1は会議の開始時CO2濃度(ppm)増加量を人数別にまとめたグラフで横軸が人数、縦軸が会議の開始時のCO2濃度(ppm)を設定しております。
緑線は線形回帰を行っており、予測値を表しています。
赤とオレンジで囲っているところが今回見ていただきたいところです。
赤とオレンジで囲っているところについて順番に説明していきます。

8人会議室で9人以上の人数が上がってしまっていた

ここで見ていただきたいのは図1の赤の丸です。
対象としている会議室の最大収容人数は8人なので横軸の人数は8人までの想定です。
ですが、図1の赤丸を見ていただくと9人~11人まで出てしまい、データが上がっています。
考えられる原因として

①Outlookでの会議室予約状況と実際に会議室で行われた人数が異なっていた。

②人感センサーが壊れていた。

③本当にその人数で行われていた。

ということが考えられます。

ですが、過去の会議の状況を特定するのは困難であるため元データを参照し、該当するデータを1つ1つ確認し、手作業で削除いたしました。

会議の開始時ppmの最大値と最小値にばらつきがある

ここで見ていただきたいのは図1のオレンジの丸です。
対象としている会議室の開始時のCO2濃度(ppm)は全て1日の中で1番最初の会議室のCO2濃度(ppm)を採取しているので、本来であれば、ばらつきはほぼ無いはずです。
ですが、図1のオレンジの丸を見ていただくと同じ人数の会議でもばらつきがあります。

最大値と最小値にばらつきがある状態ではデータを分析した際に満足いく値を出せないことがあります。

同じ人数にもかかわらず最大値と最小値にばらつきが出てしまう原因として

①Outlookでの会議室予約状況の前後に会議がずれ込んでいた

CO2センサーの不調

③会議室内ではなく、会議室外からによる外的要因

などが考えられるので、中央から大きく外れてしまっているデータを1つ1つ確認しました。

確認したところ、会議室予約情報よりも前の時間より会議が始まっている可能性や会議室予約情報よりも後の時間に開催している可能性があったので手作業で削除しばらつきを抑えました。

おわりに

弊社では社内のデータ利活用を進めています。

昨今のコロナ禍では中々密検知として使う指標が難しく、CO2濃度(ppm)で密検知の測定ができるのではないかというところでこの取組みがスタートしました。

弊社ではこのようなセンシング技術などの最先端テクノロジーや元々得意としているネットワークなどのインフラを組み合わせることでデータの利活用をお客様に推進していきます。

所感として前処理の時データとしておかしいところを全て手作業で洗い出して確認して削除したのですが、データ量として多くはないものの手作業だと時間がかかりとても大変でした。

前編では本取り組みをすることになったそもそもの背景と、取り組みの中で使用したデータやシステム、この取り組みをするにあたってどのように動いたかを記事にいたしました。

次回、後編では今回の記事のことを踏まえ、前編で触れていない実際の分析手法や結果からの考察を紹介いたします。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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