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Cisco Webex Board 上で動くクラウド型オフィスサイネージ

ライター:猪子 亮
2019年ネットワンシステムズに新卒入社。

社内/外 向けサービス開発に従事。
主にWeb アプリケーションのフロントエンド、バックエンド開発。

他には社内の自動化推進、業務改善活動、開発エンジニア育成などに取り組んでいる。

目次

 Cisco Webex Board(以下 Webex Board) はデジタルホワイトボードやテレビ会議端末として使える、4Kタッチディスプレイ搭載のコラボレーションツールです。コラボレーションツールとは、組織やチームなどで共同作業を可能にするツールの総称です。会議室に設置したWebex Boardを使えば、Webex Meetingsと連携し、資料共有を行いながらリモート会議を行うことができます。
 便利なWebex Boardですが、実はデジタルサイネージの機能も備えています。本稿ではWebex Boardのデジタルサイネージ機能を応用し、クラウド型デジタルサイネージとして活用した例を紹介します。なお、テレビ会議システムの本稿以外の活用例については、ページ下部の関連ページで紹介されています。

ネイティブ機能の課題

 Webex Boardにサイネージを設定する場合、図1のようにURLを指定します。Webex Boardハーフウェイクモード(周りに人はいるが使われていない状態) になると、設定されたURLを参照し、取得したHTMLコンテンツをディスプレイに映し出すことによりサイネージが表示されます。その他には、サイネージ機能、タッチパネル、音声の有効/無効化といった設定項目が用意されています。

図1 Webex Board Signage設定画面

しかし、これらの設定だけではオフィスサイネージとして使用することは現実的ではありません。実際にサイネージとして使う場合、以下のような課題が考えられます。

1. 複数のコンテンツを指定できない(シングルページ構成のため)

2. 個々のWebex Boardに対して、それぞれ手動で広告を設定しなければならない。
3. どの端末に、どの広告を配信するか手動で管理しなければいけない
弊社では全国のオフィスにWebex Boardが設置してあり、拠点ごとに個別で管理する運用は非常に手間がかかります。これら3つの課題を解決することにより、実用可能なオフィスサイネージを目指します。

図2 ネイティブ機能の課題

解決方法

 先の3つの課題の解決方法と必要な要素について整理します。
 1. はシングルページで複数のコンテンツを映し出す仕組みが必要です。いくつか方法はありますが、時間の経過と共に画面を遷移させることが可能なスライダー機能を持ったWebサイトで実現可能です現状、ユーザからの入力は想定していないため、静的なWebサイトで実現可能です。必要な要素としてはWebサーバ、ストレージになります。
 2. はWebex Boardが単一のエンドポイント(URL) を参照しながらも、表示内容を端末毎に動的に変えられる仕組みが必要です。さらに静的なWebサイトを参照するため、クライアントサイド(Webex Board側) で表示内容を決める仕組みも必要です。Webex Boardのサイネージの内部ではWebブラウザが動作しており、一般的なブラウザ同様にスクリプトが動作します。よって、各Webex Boardが識別可能な固有の名前(例: BranchA-01) 、その名前と表示コンテンツを対応させる定義ファイル、定義ファイルをもとに表示内容を変更可能なスクリプトが作成できれば、実現可能です。
 3. は統合的に広告を管理することができる、専用のコンソールがあると、管理しやすくなります。DBやストレージに対して操作を行えるGUIのWebアプリケーションがあると便利です。今回は機敏性があり、運用負荷やコストが押さえられることを理由に、1.2.を実現する基盤はAWS上、3.は社内オンプレ基盤で構築しました。

構成

 図3に構成を示します。注目すべき点として、サーバーレスアーキテクチャを採用している点です。通常WebページをホストするためにはWebサーバが必要になりますが、オブジェクトストレージであるS3を用いることによりサーバーレスで実現しました。これにより、コンピュートノードを用意する場合と比較して、大幅にコストダウンを図ることが可能です。
 ストレージとDBはそれぞれS3、DynamoDBを用いています。スライダーや表示内容の変更はJSで実現しており、定義ファイルはLambdaを使って生成しています。このLambdaはDynamoDB Streamによってキックされ、DBに変更が加わると自動で定義ファイルを生成します。
 パブリッククラウドの利用ということで、セキュリティについても考慮が必要になります。本構成の場合、外部との入出力はS3が担います。S3へのアクセスは社内IPからのアクセスに制限することで、情報流出を防いでいます。

図3 マネージメントコンソールを用いた場合の構成

 上記例は入力がユーザによる場合の構成です。図4はシステム連携を行い、他のシステムにより生成された広告が自動的に反映されるようした場合の構成になります。図3では管理情報(どこの端末配信するかなど) の登録をユーザが管理コンソールを通して行いました。システム連携した場合、S3の特定フォルダへアップロードされた広告をトリガーにLambdaが起動し、管理情報をDynamoDBへ登録しています。これにより、人の手を介在させずに自動的に広告配信を行えます。

図4 システム連携した場合の構成

機能

 今回、オフィスサイネージとして実装した機能は以下になります。
  • 全国一斉配信
  • 特定拠点への配信
  • エリアへの配信
  • ビデオ再生
  • スケジューリング機能 (コロナの影響により実機では未検証)
    • 配信開始日の指定
    • 配信終了日の指定
    • 定期配信(曜日指定)

まとめと今後

 今回はCisco Webex Board のデジタルサイネージ機能を活用した例を紹介しました。オフィスサイネージとして使うためには運用、管理上の課題があり、これをAWSクラウドを用いることによって解決しました。今後、ネットワンパートナーズの取り扱い製品であるSAFRを用いて顔認証を行い、パーソナライズコンテンツを表示可能なサイネージの実現を目指しています。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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