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『ローカル5GとLiDARの活用で広がる未来 スマートマニュファクチャリングの実現に向けた取り組み』 東京貿易テクノシステム、ネットワンシステムズ合同インタビュー(前編)
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製造現場の安全性や効率性の向上に貢献する、「ローカル5Gを活用したLiDARのレイアウトフリー化」共創プロジェクトが、netone valleyを舞台に実施されています。この共創プロジェクトにネットワンシステムズと東京貿易テクノシステムの2社がどのような思いで取り組み、何が生まれたのかインタビューしました。
写真左から
ネットワンシステムズ(株)東日本第3事業本部 エンタープライズ事業戦略部 プリセールスチーム エキスパート 秋本良太氏
製造業様を中心としたプリセールス活動およびパートナーアライアンスによる共創活動を牽引
ネットワンシステムズ(株)ビジネス開発本部 応用技術部 ネットワークチーム 岡﨑絢哉氏
ローカル5Gをはじめとする最先端の無線技術の検証を担当 これまで培ったナレッジを活かし、全国のローカル5G案件支援を実施
東京貿易テクノシステム(株)IoT/DX領域 IoTソリューションチーム チームリーダー 櫛田(くしだ)壮史氏
SCADAを中軸に置いた戦略で、IoT部門の各業種プロジェクト全般のスーパーバイザーとして組織を牽引
どのようにして本プロジェクトが始まったか
---LiDAR(※1)を扱う東京貿易テクノシステム(以下、TTS)と、ローカル5G(※2)を手掛けるネットワンシステムズ(以下、ネットワン)が共創することになったきっかけ、経緯をお聞かせください。
秋本
(ネットワン):

製造現場では、近年デジタル技術の活用による業務の効率化や工程の自動化が進んでいます。
ネットワンはネットワークインフラの構築を得意としており、製造業のお客様にローカル5Gを訴求したいと考えていたところ、ご紹介いただいたのがTTSさんです。
TTSさんはIoT技術に深い知見をお持ちです。工業製品を立体的に捉え、寸法や形状を正確に測る三次元測定機も各種扱われ、広範囲に対象物を計測するLiDARに強みをお持ちでした。
ネットワークインフラ領域やローカル5Gに強みを持つネットワンの知見と、TTSさんのセンサーやデータ活用の知見を組み合わせ、お客様のスマートマニュファクチャリング構築に貢献したいと、2022年、「ローカル5Gを活用したLiDARのレイアウトフリー化共創プロジェクト」の発足に至りました。
※1 LiDAR(Light Detection And Ranging)レーザー光を対象物に照射し、その反射光を捉えることで対象物までの距離や対象物の形状などを測定する技術。測定結果は三次元の座標情報を持つ点群データとなる。IPカメラと異なり光源に依存しないため、暗所でも対象物を捉えることが可能。
※2 ローカル5G 企業などが特定のエリア内で独自の「第5世代移動通信システム(5G)」ネットワークを構築すること。5Gは「高速大容量(10Gbps)」「超低遅延(1ミリ秒程度の遅延)」「多数同時接続(100万台/k㎡の接続機器数)」といった特長をもつ。

LiDARで観測した
人の点群データ
櫛田(TTS):
LiDARには半径200メートル、360度全方位的に測定できるという強みがある一方で、データ量が大きく、リアルタイム取得するには、有線LAN接続が前提となっており、使用環境の制限となっていました。
秋本
(ネットワン):
ローカル5Gは高速で大容量のデータを遅延なく伝送することが可能で、複数機器を同時接続することができます。通信事業者が提供するパブリック5Gが及ばないエリアをカバーすることができ、施設内だけでなく屋外でも活用できます。LiDARの特性を十二分に発揮し、製造ラインを不備なく稼働するには、ローカル5Gが有効だと考えました。
共創プロジェクトの内容
---「netone valley」での共創プロジェクトの内容をお聞かせください。
岡﨑
(ネットワン):

大きく分けて二つのことを実施しました。
① LiDARを使用した3次元データ作成におけるWi-Fi6とローカル5Gの比較検証
② 無線化したLiDARの活用による侵入検知デモ
①について、無線でも有線接続と同等の通信品質を実現できることを実証するため、netone valleyで、LiDARの三次元データ作成について、Wi-Fi6とローカル5Gを比較検証しました。検証の結果、Wi-Fi6ではデータが欠けるパケットロスが発生しましたが、ローカル5Gでは安定してデータを取得でき、LiDARを無線化できることが証明できました。
秋本
(ネットワン):
②について、ローカル5Gを活用し、LiDARの無線化を実現した①の検証結果に基づき、製造現場向けに侵入検知システムのデモンストレーションを行っています。このデモでは、IPカメラの映像とLiDARの点群データを統合してデジタルツイン空間モデルを作成し、危険区域への侵入を検知した際には警報を発して製造プロセスを自動停止させ安全性を向上させる方法を提示しています。
さらに、無線化で可能になった事として、有線接続では設置が難しい移動体・クレーンの先にLiDARを設置して、アームの下に人が入った際に検知して警告できることをご説明しています。

デジタルツインデモ構成
櫛田(TTS):
ローカル5G活用によりLiDARの設置場所制限の解決になるとともに、ローカル5Gの高速・大容量データ通信が可能な特性を可視化することができ、ネットワンさんのローカル5Gソリューション、TTSのLiDARソリューションが相互に活用できていると感じています。
ローカル5GとLiDARを活用するメリット
---ローカル5GとLiDARを活用して、お客様にはどういったメリットがあるのでしょうか?
櫛田(TTS):

LiDAR導入時の敷設工事やメンテナンスを効率化するだけでなく、物理的に有線LANを引くことが難しい移動体や広域な場所で活用ができるので検知エリアを拡大できます。将来的にはソーラー発電や蓄電池と組み合わせてロケーションフリーを推進できればと考えています。
工場内ではAGVなどの無人搬送車が往来する現場で安全性を確保するために、LiDARが広い空間で移動物を検知する役割は重要です。危険エリアへの人間の侵入を検知した際には、警報ランプや音声によるアラートを発し、製造ラインを停止させることで事故を未然に防ぐことができます。
---ローカル5GとLiDARは、従来のWi-FiやIPカメラと比較するとコストが気になるのではないでしょうか?
櫛田(TTS):
ローカル5GやLiDARを導入するにあたり、コストがかかる点を懸念される事業者様もいらっしゃるでしょう。しかし、人が工場内でケガや死亡事故に至った際の責任は重く、操業が休止した際の経済損失は大きいです。製造業のお客様に限らず、リスクに備えるために、LiDARを活用できる範囲は広いと考えています。どのようなシーンで効果的に活用できるか、データでの裏付けが取れてきていますので、お客様は使用場面に応じて何を使用するか選択していただくことになると思います。
秋本
(ネットワン):
そうですね、全ての場合でローカル5G・LiDARを入れていただくことは目指していません。ローカル5GとWi-Fiの強み弱みを押さえて、さらにLiDARをIPカメラとも比較しながらお話しできるようになったので、「この領域に関しては、ローカル5GとLiDARでないと安全性が担保できないので、ここには使いましょう」というように、お客様の状況に応じて、目利きができるようになったのもこのプロジェクトの一つの成果かなと考えています。

LiDARで観測した空間の点群データ
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