第4回 Office 365活用の最終形態「BYOC」はこうして実現する

働き方改革を進めるためにOffice 365を全社導入したネットワンシステムズ。同社は、セキュリティや利便性の課題を想定し、さまざまな対策を練りながらクラウド導入の準備を進めたが、トライアルで想定外の課題が発見され、それを解決してから全社導入にこぎ着けることになった。連載第4回の今回は、Office 365全社導入で同社が問題を乗り越えた方法と、その後のモバイル活用促進のための周辺ソリューション戦略、さらに、今後の働き方を大きく変えるOffice 365活用の最終形態「BYOC」に向けた構想について話を聞いた。

Office 365を攻めの姿勢で導入したネットワンシステムズに「Office 365活用」の究極の進化形の姿を聞いた(© apolia – Fotolia)

Office 365の全社導入により、メールの保存容量が拡大

ネットワンシステムズがOffice 365を全社導入する直前、いくつかのトラブルが起きた。

たとえば、Office 365に対する認証形式が、Office 2013既定のレガシー認証 (Microsoft Online サインイン アシスタント) からモダン認証 (ADAL:Active Directory Authentication Library) に変更されたことだ。

「認証方式が変更されたため、これまでのOutlook 2013を、Outlook 2016にバージョンアップする必要が出てきました。そのためOffice 365の全社導入が、予定していた7月から1カ月先の8月になりました」(木下氏)

メーリングリストで見つかった課題は運用を一部変更して対応

トライアルをやってみると、これまでもオンプレミスのMicrosoft Exchangeを利用していたので、SharePointや予定表の利用に関しては問題なかった。ただし、メールの使い勝手が変化したため、運用時に影響が出た。小野氏は次のように振り返る。

「たとえばメーリングリストは、これまでfmlを利用していたため、Office 365のメーリングリストに違和感を覚えるユーザーが多くいました。fmlではメールのタイトルに固定文字と番号が付与されます。これがOffice 365にはなかったのです。カスタマーサービス部門では、メールの順番や抜け、業務の引継ぎ案件などの連絡にこの番号を利用していたため、同様の使い勝手を求めていました」(小野氏)

またOffice 365では、共同作業するチームメイトを選定し、メンバーが共有するOutlookの受信トレイ、予定表、ドキュメントライブラリなどをグループ化できる機能がある。この機能を使う際に、Outlook 2013のままだと使い勝手がよくないという問題もあった。

「グループ機能は、Outlook 2013では使うことができなかったため、一時的にWeb上(Outlook on the web)で利用してもらっていたのですが、さすがに全社導入の際には、これではユーザーの利便性に応えられないと考え、Outlook 2016に変更したほうがよいという判断がありました」(小野氏)

Office 365を全社導入する際には、まず初期値のセットアップを行う必要がある。たとえば、この段階で業務における約1万のメーリングリストが立ち上がっており、その移行のための初期値設定はバッチ処理で10日間ぐらいかかる量だったという。また、こうしたセットアップと並行し、ユーザー説明会を開いた。また、移行後には1週間にわたって腕章をつけたサポート要員を40名配置し、ユーザーからの問合せに応じたり、積極的な声かけを実施した。

では、Office 365の全社導入により、どのような効果が表れたのだろうか。

まずクラウドになったことで、メールの保存容量が100GBになり、ローカルPCのディスク容量の逼迫を回避できるようになったことが効果の1つといえる。

「ユーザーが使っているVDI上のローカルドライブに関係なく、メールをどんどん保存できることがメリットになっています。またOffice 365グループでも利点があります。Office 365グループのメールボックスと、個人のメールボックスが分かれているため、メーリングリストのメールがアーカイブされます。Office 365グループに途中で参加しても、引き継ぎなどの際にさかのぼって過去の配信メールを閲覧できるので利便性が高まりました」(小野氏)

もちろんハードウェア保守という観点でも、クラウド化は情報システム部の大幅な工数削減に貢献している。情報システム部がこれまで管理してきたオンプレミスのメールシステムがなくなったからだ。具体的な効果についてはこれから数値として算出する予定だ。

全社導入によりモバイルワークと働き方改革がさらに加速

Office 365の全社導入は、同社が進めているモバイルワークと働き方改革につながっている。

たとえば現在、セキュアなモバイルワークを実践するにあたって、VMwareのさまざまな技術を導入しているところだ。

具体的には、第1回で触れた統合エンドポイント管理用ソリューションの「VMware AirWatch」によって、モバイルデバイス管理(MDM)機能と、「Intune」を組み合わせたモバイルアプリケーションの管理(MAM)機能を実装している。

「SAPなど社内アプリケーションや作業の承認フローを、上長がVMware AirWatchやIntune経由で実行できるようにトライアルを行っているところです。やはりモバイルワークで求められている点は、外出先の上長から受発注や作業などの承認をもらうことですから、これはぜひ実現したいですね」(木下氏)

現在、モバイルワークに関しては、まだOutlookの直接的な利用はしていないが、AirWatchのセキュアなゲートウェイを通って、Intune経由でOffice系ソフトウェアを使うという流れになっている。

それと同時に、セキュアなオンラインストレージの「Box」を使うこともできるよう検証を行っているところだ。

「モビリティを進めるモバイルデバイスの活用は、利用中の操作感をPCからそのまま引き継ぎつつ、これまでできなかった承認系作業をアプリケーション化していく流れになると思います。全社で展開する際には、社内ユーザーが慣れた手順で使えるようにする必要があるため、技術的な整理検討が求められるでしょう」(小野氏)

モバイルワークに関しては、まだ多くのセキュリティの課題をクリアする必要もある。

「たとえば端末をなくしたときの対処です。リモートワイプで端末の情報を消すにしても、どこまで消してよいのか、そのサジ加減の問題があります。社給の端末であれば、すべての情報を消せるのですが、今後BYODで私物端末も使われるようになれば、ポリシーも整備しなければなりません」(木下氏)

働き方改革の本質に向かってチャレンジは続く

このような運用面での課題をクリアし、モバイルワークが実現できた暁には、ネットワンシステムズの働き方もドラスティックに変革できるだろう。

「出先の営業マンやSEが、お客さま対応をする中で、分からない質問を受けても、モバイルによってTeamsでチャットして解決したり、見積もりを上長に確認して迅速な回答ができるようになります。モバイルワークによって、これまで以上にスピーディな対応が可能になるでしょう。現場で働く担当者にとって、利便性が向上し、生産性も上がると思います」(小野氏)

働き方改革の本質は、いつでも、どこでも、したい業務を自由な環境でできるようにすることだ。もちろん、これまでもVDI経由のiPhoneでワークフロー認証は可能だったが、小さな画面で作業することは現実的な解とは言えなかった。

それがモバイルワークが実現すれば、いつもで、どこでも、自分の端末を使って作業できるようになる。しかし現状では、こうした技術は一足飛びに実現することは難しい。いま使えるテクノロジーを組み合わせながら、セキュリティや使い勝手を十分に考慮しながら、1つずつ実現していくことになる。

ネットワンシステムズは、モバイルワークの次にはマルチクラウド化に進み、Office 365やG Suiteといった複数のサービスをユーザーが自由に選択できるような「BYOC」(Bring Your Own Cloud)の仕組みも検討しているところだ。

ユーザー視点で課題を捉え、その解決に向けて自社の改革の手を緩めず、さまざまなチャレンジを続けていくことが重要になってくる。

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