Metro DCIの新しいスタイル

ビジネス推進本部 応用技術部
コアネットワークチーム
関原 慎二・松井 裕二

クラウドやIoTの本格利用に向けデータセンター(DC)の規模や転送するトラフィックが増加し続けています。そして今後は80km程度までの短中距離エリアで複数のDC間を接続してトラフィックの分散と超低遅延化が進むと予想されています。DC間の接続では光ファイバーに複数の光信号(チャネル)を波長多重するWDM伝送装置が必要となり、コストや運用がその課題となっています。そのためWDM伝送装置のトラポン機能をスイッチ側に実装する光モジュールで実現し、伝送(レイヤ1)とスイッチ(レイヤ2)を統合してコストを削減する動きが登場し、実際に採用しているDC事業者もみられます。弊社ではArista社製スイッチとADVA社製伝送装置を連携した”Cost Optimized Metro DCIソリューション”の提案に向けその接続検証を行いました。

Metro DCIソリューション/Cost Optimized DCI Solution

メトロエリアでDC間(DCI)の接続を行う場合、50kmを超える距離も想定されており、その実現には以下のような課題があります。

(1)10km以上の構成でイーサネットトランシーバが直接に接続できない
※40kmまでのトランシーバもあるが少ない
(2)その為にDC間のL2/L3スイッチを接続する場合にWDMのような伝送装置が必要となる
(3)WDMを使用した場合、クライアントサービス増設時にWDM側にトランスポンダが追加になる(CAPEXの増加)
(4)DC両拠点で同じベンダーのWDM装置が必要になる
(5)WDMに対する運用が別途、必要になる(OPEXの増加)

この課題解決の1つとして、WDMトラポン機能を伝送装置からスイッチに移行するアイディアがあります。これはスイッチにWDM波長毎のトランシーバ(QSFP28)を実装し、伝送装置では波長多重と光増幅のみ行うというもので、半導体の高度化(トランシーバ小型化と高機能化)やSoCスイッチ技術によって実現されるソリューションです。以前のコラムでご紹介したように光ディスアグリゲーションと呼ばれるもので、QSFP28トランシーバによるコモディティ化が可能になりシステムの簡素化と共にコストメリットも実現できます。弊社ではAristaスイッチにQSFP28トランシーバを実装しADVAスマートアンプ(SmartAmp)によるソリューションを提案しています。

従来構成(WDMによるMetro DCIソリューション)

SmartAmpによるCost Optimized DCI Solution

 

気になる導入コストですが、従来型のWDMトラポンがQSFP28トランシーバに置き替わる事、及びλGrayのトランシーバが不要となる事に加え、ネットワーク機器のコンフィグに類似するCLI(コマンド・ライン・インタフェース)での運用・管理となる事をトータルで換算してみると、従来比で1/2~2/3程のCAPEX・OPEXを実現出来る可能性はあります。

Arista, ADVA検証構成

検証では、データゼンタ事業のBCP(事業継続)/DR(災害対策) バックアップ・リカバリ対策として数十キロ離れた拠点にデータを転送するネットワークを想定しています。
構成ですが、データセンタ内でAristaスイッチに集約された各種データは、光ファイバケーブルを介してSmartAmpと接続されます。
SmartAmpはダークファイバに見立てたドラムファイバ(10km~40kmの)と接続され、対向するSmartAmp、Aristaスイッチと接続され事業継続の為のデータを保護します。
伝送装置として拠点間を繋ぐ為に必要な基本的機能(Mux/Dmux、アンプ、分散補正)は、SmartAmpが備えており、検証では、インストレーション、及び運用性対する確認を行っています。

機器接続イメージ

機能構成(SmartAmp)イメージ

Arista 7060CXに100G DWDM QSFP28トランシーバを実装。(AristaのQSFP28トランシーバはInphiより供給されている。)
QSFP28トランシーバは、PAM4信号(※)を出力します。
Arista QSFP28から出力された波長は、ADVAのSmartAmpに収容されます。SmartAmpは、この信号をMux/Dmuxして増幅(ブースター)した後、対局へ送信します。対局側では、光ファイバー伝送で劣化した信号を再び増幅(プリアンプ)し、且つ、累積された波長分散値を適正な値へ補正し、両拠点のAristaスイッチが最適な状態で繋がるよう必要なパラメータ調整を行います。

 

参考まで、Arista QSFP28 PAM-4の特性は以下の通りであり、トランシーバ同士を直結して繋いでもリンクは確立しません。分散耐力については、光ファイバー5Km程度に耐えうる値となっています。
Tx power: -11 to -8 dBm (perλ)
Rx power: -2 to +6 dBm (perλ)
Dispersion Tolerance: -100 to +100 ps/nm

現時点、全てのメーカで3rd Party製品の利用を許容している訳ではありません。
もし、CAPEXの削減を期待し3rd Party製品の光トランシーバの導入検討する場合は、搭載機器メーカのサポート有無、使用可否を確認しておく必要があります。

では、実証試験について、主とする着眼点は3つ。
1. 光ファイバー伝送路損失を自動的に測定し、Aristaスイッチ間でリンク確立する為に適切なゲイン調整する機能の確認
2. 光ファイバー長が変わった時、波長分散値を再補正する機能の確認
3. Aristaスイッチでのパフォーマンス値のモニタ機能

結果、
1.ゲイン調整機能(SmartAmp)
可変アッテネータを使ってダークファイバ区間相当の損失を増減。
結果、ゲイン再調整コマンド投入により、Aristaスイッチ間でリンク確立する為の光レベル調整が自動的に実行される事を確認。
SmartAmpは、ダークファイバ区間の損失増減に対する対応のみで無く、AristaスイッチQSFP28 PAM-4の受光レベルについても仕様に合うよう調整される。

2.波長分散補正(SmartAmp)
拠点間を繋ぐの光ファイバーを10Km~40 kmまで交換して検証。
結果、分散再調整コマンド投入により、SmartAmp間の波長分散を自動的に計測し、且つ最適な値で分散補正する事を確認。
前述のゲイン調整機能含め、これらの機能はネットワーク品質を均一に保つ(作業者のスキルに左右されない)ことが可能となり、OPEX削減にも寄与するものである。

3.Arista機器でのパフォーマンス値モニタ機能
QSFP28トランシーバに対して、送受信の光レベルやトランシーバ種別、インタフェースの各種パラメータを確認出来る。

 

まとめ

今回、Metro DCIの新しい実現手法としてADVA/Arista連携による接続検証を行い、伝送(レイヤ1)とスイッチ(レイヤ2)を連携した機能動作の確認を実施できました。
このソリューション(Arista QSFP28とADVA SmartAmpの組み合わせ)では、簡単に且つ早期にインストレーションする事が出来ると共に、トランシーバの追加により最大4Tbit/sまでの拡張を可能とします。さらに今後はソフトウェアによるネットワーク制御(SDN)やレイヤ1とレイヤ2を統合したネットワーク管理(NMS)へと進んでいきます。
Metro DCIは複数メーカによるシステム構成で日々、その技術は進化を続けています。弊社では成長を続けるクラウド、IoT市場を視野に戦略的な提案を進めています。

補足

Arista 100G DWDM QSFP28トランシーバをサポートするプラットフォーム、及び40種類のQSFP仕様については、メーカサイト(データシート)を参照願います。
Arista 100G DWDM QSFP Datasheet

謝辞(Acknowledgments)

今回の検証を行うに当たり、機器の貸出し含め、諸調整、並びにサポート頂きましたベンダー各社に感謝申し上げます。
Special thanks to Arista, Inphi and ADVA.

用語説明

※PAM4信号
2015年7月のIEEE802.3bs/400GbEタスクフォース会合でシングルモード光ファイバーを使用した10kmまでの伝送方式として今までのNRZ符号変調(2値変調)と異なる4値変調方式であるPAM4(PAM:Pulse Amplitude Modulation)が採用された。
この4値を使用したパルス振幅変調により、1シンボル(ボーレート)につき2ビット(4値)の伝送が可能となる。
 

参考文献

Road to 100G – 100G の現状
Road to100G-100Gインフラを導入するメリット
Road to 100G – 100G 高信頼性の実現、冗長技術について
Beyond 100G をめざすオプティカル技術
Beyond 100G 光通信を支えるオプティカル技術
通信システムでソフトエラーが発生!
WDM光伝送装置の新しいコンセプト Open Optical Line System(OOLS)とは?
ファイバからの盗聴を防止する光トランスポート暗号化技術
光トランスポートとコラボするFlex Ethernetって?
クラウドネットワーキングのインフラとして、改めて注目を浴びるIP over WDM
ついに実現!! 光伝送システムのディスアグリゲーション

 

執筆者プロフィール

関原 慎二
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 応用技術部 コアネットワークチーム
所属
通信機メーカ入社後、キャリア向け伝送装置のハードウェア開発、LSI設計等に従事。
ネットワンシステムズではオプティカル製品(FTTH、WDM)の評価、検証及び案件技術支援を担当。
・ADVA Certified Expert #083193
・工事担任者デジタル1種

松井 裕二
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 応用技術部 コアネットワークチーム
所属
通信機メーカにて、NTT向け、管民需向け伝送ビジネスのシステム設計業務に従事
ネットワンシステムズ入社後、オプティカル製品(SONET/SDH,、RPR、WDMなど)の評価、検証及び案件技術支援を担当
・ADVA Certified Expert #083192
・監理技術者

イベント/レポート

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