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その端末は何stream? 案件から学ぶ無線LAN端末選定のポイント

匠コラム
ネットワーク

市場開発本部
ソリューション・サービス企画室 第2チーム
山下 聖太郎

スマートデバイスの普及や、IEEE802.11n/11ac規格(以下11n/11ac規格)に対応した無線LAN製品が主流になり、企業においても無線LANのニーズは高くなっています。
それに比例して無線LANの悩みやトラブル事例も増えてきており、事前に知っていれば回避できたトラブルも多く存在します。

本コラムでは、筆者の日々の業務の中で、実際にお客様が遭遇した事例を元に、無線LANにおける機器選定のポイントについて紹介します。

無線LAN端末はサポート規格を見るだけでは不十分?

購入を検討しているデバイスの有線ポートがどれだけの速度が出るのか知りたい場合は、有線ポートのサポートしている規格を調べれば、どの程度のスループットが出るか分かると思います。
例えばPCの場合、データシートには下記のような記載がされ、有線のインタフェースが1000Mbps(1000BASE-T)に対応しているのであれば、最大1Gbpsの伝送速度での通信が可能なPCという事が一目で分かります。

伝送速度:10Mbps (10BASE-T)、1000Mbps(1000BASE-T)、100Mbps (100BASE-TX)

一方、無線LANデバイスの場合、データシートには下記のように無線LANの規格名のみが記載される事が殆どです。

figure01
図1.一般的な11ac対応無線LAN端末のデータシート上の表記

この表記から、2.4GHz帯は11b/g/nに対応しており、5GHz帯は11a/n/acまで対応しているという事は読み取れます。

多くのお客様は、この無線LANデバイスは2.4GHz帯と5GHz帯に対応しているので問題ないと思ってしまいますが、ここに落とし穴があり、この情報では無線LAN端末が2.4GHz帯/5GHz帯それぞれにおいて、サポートしている最大の伝送速度分かりません。

せっかく最新の11ac規格対応の無線LAN端末を購入しても、端末のサポートしているstream数によって逆に伝送速度が落ちる、という事があります。
次章では筆者が実際に遭遇した案件事例を元に、機器選定の際のポイントについて解説致します。

事例:無線LANアクセスポイントと無線LAN端末のリプレイス案件

ある案件で11ac規格対応のアクセスポイントの導入に伴い、無線LAN端末の追加購入を検討されているお客様がいました、そこでさっそく筆者は選定された無線LAN端末の型番を教えてもらい調査する事にしました。

筆者が無線LAN案件の初期に必ず確認する項目の一つに、接続を想定している無線LAN端末の型番があります。

昨今では不特定多数の無線LAN端末を利用する案件も増えてきているので、全ての案件で型番がはっきりとわかる訳ではありません。
しかし今回のように利用する無線LAN端末が把握できる場合は、対象の無線LAN端末に内蔵されている無線LANのチップセットまで確認し、お客様の利用用途に合った無線LAN端末かどうかを必ず調査します。

なぜここまでするかと言うと、内蔵されている無線LANのチップセットを調査する事により、その無線LAN端末でサポートされる最大の伝送速度が判明するからです。

●11ac対応ではある、しかし1streamの端末
お客様が選定された無線LAN端末もデータシート上は図1のように11ac規格対応の無線LAN端末でした。
しかし、内蔵された無線LANチップセットの型番を調査すると下記の型番である事が分かりました。

Intel® Dual Band Wireless-AC 3160

このチップセットは11ac規格には対応しているけれど、1本のアンテナで送受信を行う1streamのチップセットになります。
データシートに記載されている、最大の伝送速度は433.3Mbpsです。

同時に既存で利用していた無線LAN端末の内蔵された無線LANチップセットを確認した所下記の型番である事が分かりました。

Intel® Wireless WiFi Link 4965AGN

このチップセットは11n規格ではありますが、2本のアンテナで送受信を行う2streamのチップセットになります。
データシートに記載されている、最大の伝送速度は300Mbpsと記載です。
1本のアンテナで送受信する1stream端末と比べ、2streamの端末は同じ条件であれば倍の速度が出すことが可能ですが、データシートだけを見ると、一見Wireless-AC 3160よりも遅いチップセットに見えます。

figure02
図2.各無線LANチップのデータシート上の値

ここで注意する必要があるのが、無線LANチップセットのデータシートに限らず、最大伝送速度○○Mbpsと記載されている無線LAN製品の殆どが、複数のチャネルを束ねて通信する、チャネルボンディング機能を有効にしている時の最大データレートを記載しています。

チャネルボンディングとは1台のAPで複数のチャネルを束ねて利用する事により、伝送速度を束ねた分だけ通信速度を倍増させる事が可能な機能です。
ただし、多数のAPが同一フロア内に存在する事が多い企業向けの無線LANシステムにおいては、AP間で電波干渉せずに利用できるチャネル数が減ってしまうデメリットがあるため、利用される事があまり無い機能になります。
利用したいというお客様に対しては、試験的にスモールスタートで導入する事を弊社では推奨しております。

figure03
図3.チャネルボンディングを利用した際の電波干渉せずに利用できるチャネル数

●チャネルボンディングを利用するかしないかで立場が逆転
ではチャネルボンディングを使わない時の両方のチップセットの最大伝送速度はどのようになるのでしょうか。
チャネルボンディングを利用した時としない時に分けて、両方のチップセットを詳細に比較すると下記のような違いが見えてきます。

figure04
図4.各無線LANチップのボンディングの有無による最大データレートの違い。

[5GHz帯の比較を見てみた場合]
11ac規格の80MHzのチャネルボンディングを利用しているWireless-AC 3160と11n規格の40MHzのチャネルボンディングを利用しているWiFi Link 4965AGNを比較すると、最大データレートが433.3MbpsのWireless-AC3160の方が高速です。
しかし、ボンディングを利用しない場合は2stream対応のWiFi Link 4965AGNの方が高速になります。

[2.4GHz帯の比較を見てみた場合]
2.4GHz帯の場合、どちらも11n規格を利用しているため、stream数の差がそのまま表れるのでWiFi Link 4965AGNの方がボンディングを使っても使わなくても高速になります。

つまり、チャネルボンディングを利用しない案件においては、図4.の赤枠に記載のあるように2.4GHz帯/5GHz帯どちらにおいてもWireless-AC 3160よりもWiFi Link 4965AGNの方が早いという事になります。
そのため、選定された無線LAN端末では、お客様が想定していた11ac導入による5GHz帯における速度の向上が見込めない事が分かりました。

●11ac対応、かつ2streamの端末に
その後の対応としましては、11ac規格の1streamでは無く、アンテナ2本で送受信をする事の出来る2stream対応の下記無線LANチップが内蔵されたノートPCを選定しなおして頂く事で、5GHz帯において既存で利用している無線LAN端末以上の速度を得る事が可能になりました。

Intel® Dual Band Wireless-AC 7260

figure05
図5.各無線LANチップのボンディングの有無による最大データレートの違い。

まとめ

今回の事例のように、最新規格に対応しているだけでは、実際にサポートしている最大転送速度は分からないため、気づかずに購入した場合思わぬトラブルになる事があります。

無線LAN端末においてはデータシートに記載されているサポート規格を見るだけでは無く、内蔵された無線LANチップセットまで調査する事で、無線LAN端末の本当の性能を知る事が出来ます。
無線LAN端末を購入後に想定通りの速度が出ないという事にならないよう、機器選定の段階でstream数まで確認する事が重要です。

今後無線LANアクセスポイントや端末の機器選定を検討されている方は、利用しようとしている無線LAN端末がどのチャネルまでサポートしているのかまで確認すると、購入後の無用なトラブルは未然に防げるかもしれません。ご参考になれば幸いです。

執筆者プロフィール

山下 聖太郎
ネットワンシステムズ株式会社 市場開発本部
ソリューション・サービス企画室 第2チーム
所属

  • 第一級陸上特殊無線技士
  • 第1回 シスコ テクノロジー論文コンテスト 最優秀賞

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