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第4回 無線LANの製品や技術の理解を助けてくれる便利な単位「dB(デシベル)」 ~実験的検討に挑戦!どこのメーカも具体的に示していない無線LAN製品におけるダイバーシチ受信の性能状況 その4~

匠コラム
ネットワーク

ビジネス推進本部 第1応用技術部
スイッチワイヤレスチーム
松戸 孝

本コラムは、どこのメーカも具体的に示していない無線LANアクセスポイント製品のダイバーシチ受信の性能状況を試行錯誤して実験的に検討した挑戦記の第4回です。前回の第3回では、屋内の事務所のフロア環境における実験によって測定された受信電力(S)と雑音電力(N)の比であるSN比(SNRとも記載します)のデータを直感的に、さらに、定量的に把握しやすくするために、頻度分布と累積確率分布という方法でデータ解析して、無線LANアクセスポイントの「選択ダイバーシチ受信」の性能状況を明らかにしました。
今回の第4回では、SN比等の単位として登場した「dB(デシベル、または、デービーと発音)」を極力、わかりやすくなるような解説に挑戦します。「dB」は、高等学校時代の数学で学習したことでしょう「対数」の概念が根本にあります。日常生活では、「対数」なんて意識することは、通常はないでしょうから、「dB」という単位には、もやもや感がいっぱいかもしれません。しかし、「dB」は、無線LANの製品や技術の理解を助けてくれる便利な単位です。自習のときに、各種の本や検索して出てくるWEBサイトの資料等で、自分なりに納得して割り切る際に、本コラムでの解説の表現が、少しでも役だっていただければ幸いです。

連載インデックス

(1)無線LANへの対応におけるdBの登場例

(その1)SN比
無線LANのサービスエリアの目安は、PCデータ通信の場合には、SN比が20dB(デシベル)以上になるように、そしてリアルタイム性が顕著である音声通信の場合には、SN比は25dB(デシベル)以上になるようにすることが、一般的である。

(その2)送信電力
無線LANのアクセスポイントの送信電力は、11dBm(11デービーエム)の固定値に設定した。

(その3)受信感度
シスコシステムズ社製のCisco Aironet 3700 シリーズ無線LANアクセスポイントの受信感度は、伝送速度288.9Mbps(但し、IEEE802.11ac規約のWave1対応として、空間多重数が3ストリームで、伝送帯域幅が20MHz幅で、ガードインターバールが400ナノ秒で運用する場合)では、-71dBm(マイナス71デービーエム)である[1]。

(2)dB(デシベル、または、デービーと発音)とは?

(2-1)2つの電力の比を、特別な計算で変換
dBとは、2つの電力の比を、特別な計算で変換して表現したときにつける単位です。
例えば、2つの電力の比の例は、上記項目(1)(その1)で述べた、電波の受信電力(S)と雑音電力(N)の比であるSN比です。

(2-2)特別な計算で変換する理由
特別な計算で変換する理由は、2つの電力の比のままだと、かなり桁数が多くなってしまい、間違えやすくなったり、取扱いがしにくいからです。特別な計算で変換することによって、2つの電力の比が、桁数の少ない、取扱いしやすい値に変換できます。
①無線LANでの一例:電力mW(ミリワット)の表現
雑音電力(N)=通常の事務所環境では、0.000000001 mW(ミリワット) 程度
電波の受信電力(S)=0.000001 mW
SN比=SNR=S(単位mW)÷N(単位mW)=0.000001÷0.000000001=1000 倍
②一方、上記項目①を dB で表現すると、
(無線LANでの一例:dBでの表現)
雑音電力(N)=通常の事務所環境では、-90dBm 程度
電波の受信電力(S)=-60dBm
SN比=SNR=S(単位:dBm)-N(単位dBm)= -60-(-90)=30dB

(2-3)特別な計算は、10を底とする対数
特別な計算は、10を底とする対数 を使い、その計算結果をさらに10倍します。
①対数の長所は、「かなり桁数が多い数値」を「桁数の少ない数値」として変換して表現できることです。さらに10倍する理由は、最終的に、さらに扱いやすい大きさの数値に変換するためです。
②数式で表現すると、次のようになります。
dBで表現された2つの電力の比=10×LOG10(2つの電力の比(真数))
ここで、LOG10( ):10を底とする対数、です。
(無線LANでの一例)
上記項目(2-2)の①と②のSN比の関係は、次式からの関係です。
10×LOG10(S÷N)=10×LOG10(0.000001÷0.000000001)=10×LOG10(1000)
=30dB
=SN比が1000倍とは30dBのことです。

(2-4)(基本)比=相対値につける単位としてのdB
特別な計算によって、dBとして変換表現された2つの電力の比は、あくまで 比 なので、相対的な数値です。上記項目(1)(その1)のSN比が、その代表例です。

(2-5)(応用)絶対値を容易に換算できる単位としてのdBm
①2つの電力の比=分子となる電力÷分母となる電力 です。ここで、分母となる電力=基準となる電力を、1mW (1ミリワット)に固定して、その2つの電力の比をdBで表現すると、そのdBで表現された値は、絶対値を容易に換算できることになります。
②この場合、分母となる電力=基準となる電力=1mWであることを明確に示すことが必須ですので、dBに添え字のmをつけて、dBm と表現します。発音は、デービーエム です。デシベルエムとは、発音しないことが一般的です。
(無線LANでの一例)
上記項目(2-2)の①と②の雑音電力(N)の関係は、次式からの関係です。
10×LOG10(N÷1mW)=10×LOG10(0.000000001÷1)=10×(-9)
=-90dBm
=雑音電力(N)が0.000000001 mWとは-90dBmのことです。
もう1つの例として、
上記項目(2-2)の①と②の電波の受信電力(S)の関係は、次式からの関係です。
10×LOG10(S÷1mW)=10×LOG10(0.000001÷1)=10×(-6)
=-60dBm
=電波の受信電力(S)が0.000001 mWとは-60dBmのことです。
さらにもう1つの例として、
上記項目(1)(その2)の無線LANのアクセスポイントの送信電力値11dBmは、約12.6mWのことです。
これは、次式のとおりです。
10×LOG10(12.6mW÷1mW)=10×LOG10(12.6)=11.0037・・・
=11dBm
さらに、さらに、もう1つの例として、
上記項目(1)(その3)の無線LANのアクセスポイントの受信感度-71dBmは、約0.000000079mWのことです。
これは、次式のとおりです。
10×LOG10(0.000000079mW÷1mW)=10×LOG10(0.000000079)=-71.023・・・
=-71dBm
③対数の性質から、2つの電力の比(真数)の割り算は、分子となる電力と分母となる電力が、別途、両方とも単位が同じdBmとして表現されていると、引き算として計算できるので、取扱いがしやすくなります。
(無線LANでの一例)
上記項目(2-2)の①のSN比は割り算ですが、一方、上記項目(2-2)の②のSN比は、SとNの単位が同じdBmなので、
引き算で計算できています。割り算より、引き算の方が、計算は楽ですね。
★(注意)★
なお、SとNの単位がdBmの場合でも、それらの引き算で計算できたSN比の単位は、mがつかないdB、つまり、dB と表現します。
その理由は、SN比は、SとNを比較した相対値だからです。それゆえ、相対値としての dB がSN比の単位になります。
根本的には、上記項目(2-2)の①のSN比であることを理解すれば、相対値であることが納得できましょう。

(3)★(注意)★ dB単位の数値のままで平均値を計算しては、いけない。

dB単位の数値が複数あって、それらの平均値を計算する場合には、それらのdB単位の数値のままで平均値を計算しては、いけません。正しい計算方法は、dB単位の数値を、一度、真数にもどして、その真数で平均値を計算しておいて、その結果を、dB単位に変換します。次の計算例を見れば、正しい計算方法が、物理的な意味を、しっかりと表現していることがわかります。
(計算例)
受信電力が-60dBmと-80dBmの2つの測定データがあります。これら2つの測定データの平均値を知りたい。
(誤った計算方法)
(-60+(-80))÷2=-70dBm=誤った計算結果
(正しい計算方法)
上記の計算例の物理的な意味は、2つの受信電力の平均値を計算することです。従って、受信電力を特別な計算で変換して表現したdBm単位の数値から、変換前の段階の受信電力の数値(真数)に戻して、平均値の計算をすることが正しいです。
-60=10×LOG10(S1÷1mW)なので、真数S1=(10^(-60÷10))×1mW =0.000001mW
ここで、10^( ):10の( )乗です。
-80=10×LOG10(S2÷1mW)なので、真数S2=(10^(-80÷10)) ×1mW =0.00000001mW
これら2つの真数の平均値である真数S3は、次のとおりです。
(真数S1+真数S2)÷2=0.000000505mW=真数S3
真数S3を単位dBmで表現すると、
10×LOG10(真数S3÷1mW)=10×LOG10(0.000000505)=-62.967・・・=約-63dBm=正しい計算結果。

まとめ

無線LANの製品や技術の理解を助けてくれる便利な単位「dB(デシベル)」を、極力、わかりやすくなるような解説に挑戦しました。表計算ソフトウエアのEXCELや電卓を使って、本コラムの連載で登場してきているSN比(SNR)等のdB単位の数値を、SとNの電力比の数値へ戻したり、反対に、SとNの電力比の数値をdB単位の数値へ変換したり、ぜひ、ご自身でも試行錯誤してみてください。きっと、dB単位の数値の便利さが実感できると思います。そして、本コラムの第3回までをdB単位の数値に着目しながら改めて読み返していただき、実験的に明らかにされたIEEE802.11abg規約時代の無線LAN製品に採用された「選択ダイバーシチ受信」の性能状況を、dB単位の数値で味わってみてください。
次回は、IEEE802.11abg規約時代から進化したIEEE802.11n規約時代の無線LAN製品に採用された「最大比合成(Maximal Ratio Combining: MRC)ダイバーシチ受信」について、その性能状況を実験的に明らかにしていきます。

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執筆者プロフィール

松戸 孝
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 第1応用技術部 スイッチワイヤレスチーム
所属
無線LANの製品担当SEとして製品や技術の調査、検証評価、技術者の育成、及び、提案や導入を支援する業務に従事

  • 第一級無線技術士
  • 第1回 シスコ テクノロジー論文コンテスト 最優秀賞
  • 第2回 シスコ テクノロジー論文コンテスト 特別賞
  • 第3回 シスコ 論文コンテスト 特別功労賞

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