不測の事態が起きても、落ちないシステム

ビジネス推進グループ
執行役員 篠浦文彦

前回は、ICTの仮想化、ワークプレースの仮想化で、企業活動の生産性を大きく向上する取り組みをご紹介しました。実は、これが日常だけでなく、“非常”の際にも有効なソリューションであることをご存知でしょうか。
 今回は、仮想化を進めた先で可能になる、高度でコストパフォーマンスの高い事業継続計画実現の例とその効果を、ネットワンシステムズでの取り組みで見ていきます。

実はアクティブ・アクティブ運用は難しくない

 東日本大震災によって、多くの企業は不測の事態で業務が中断するリスクを抱えていることを再認識しました。実際、当社のお客さまの中にも、データセンターが停止したり、オフィスのデスクトップPCが水浸しになって、仕事が行えない状況に陥ってしまった例がありました。

 業務の中断は機会損失や信用力低下を招きます。しかし、それだけならまだ自社だけの問題ですが、今日、企業活動が社会のインフラ化しているケースが増えており、一社の活動中断が社会全体の活動を止めてしまう危険をはらんでいます。そういう意味でも、何かあったときでも動揺することなく事業を続けられるめどを立てておきたいものです。

 企業活動がICTと深く結びついている今日、事業継続計画(Business Continuity Plan、以下BCP)というと、ICT資産を二重化してどちらもアクティブな状態にしておき、何かあったら片方から片方へ運転を切り替えるアクティブ・アクティブ運用が最善とされます。そうではあるものの、資産を二重持ちするコスト負担が大きく、また両者の同期を保ち続けるテクノロジーも難易度が高いことから、アクティブ・アクティブ運用手法の実現は難しいと思われてきました。

 しかし、実は、ICT、ワークプレースの仮想化を進めていくと、これはそう難しいことではありません。高度なBCP実現、そのカギは仮想化という取り組みの先にあります。

まずは仮想化でシステムバックアップ体制を確立しよう

 なぜ仮想化がBCP実現を後押しするのでしょうか。仮想化を進めれば、ICT資産のバックアップが行いやすくなります。そして、そこで生まれたバックアップ資産はいつでもアクティブにできるスタンバイ資産となり、これを活用していざというときに運転切り替えができます。しかも、物理環境でアクティブ・アクティブ運用を実現しようと考える場合に比べて、投資コストがかなり少なくてすみます。ただ、そのバックアップの取得については少し発想の転換が必要で、全社的な規模で行う必要があります。それをネットワンシステムズの例でご紹介していきたいと思います。

 従来、企業においては、システム環境のバックアップというのは部分最適で行われてきました。部門単位、サーバ単位、業務アプリケーション単位という形で、仮想化が進められていたとしても細分化された状況は変わらなかったため、そこには少しずつリソースの無駄が発生していました。
 また、ユーザー環境のバックアップはユーザー個人の運用に任され、企業としてバックアップ対象に含めていないケースもままありました。恥ずかしながら、ネットワンシステムズがまさにそうでした。
 しかし、万一の事態が発生した場合、ある特定のアプリケーションが一時的に使えなくなっても復旧するまで待てば済みますが、ユーザー環境が使えないと話になりません。特に、当社ではユーザー環境がIP電話などユニファイド・コラボレーション機能も担っているため、ユーザー環境は非常に重要でした。

 そこで、バックアップ取得では、サーバ環境、ユーザー環境といった区分を廃してすべてを対象とし、それも部分的にではなく包括的に行うことにしました。つまり、システム環境の全体仮想化を進めていた当社は、それをまるごと論理的に一つのものとしてバックアップすることにしたのです。

 バックアップポリシーは、アプリケーションの特性ごとに日次バックアップ、リアルタイムバックアップなどに振り分けていきましたが、全体として、バックアップ取得を2時間以内に、システム復旧に関しても2時間以内に完了できる体制確立をめざしました。

 結果的に、テクノロジーと独自に確立した運用ノウハウの組み合わせにより比較的早い段階で実現することができました。より具体的にいえば、バックアップでは重複除外技術などバックアップ時間を短縮する最新テクノロジーを駆使し、そのスケジュールもアプリケーションのピークタイムやユーザーの端末利用特性、ネットワーク負荷をにらみながら詳細に調整しました。システム復旧に関しても、IT部門内でリストア訓練を繰り返すことによって、2時間内での完全復旧が確実に行えるようになっています。

 実現した背景には、この取り組みに合わせてIT部門の人材を強化したこともあります。ともすれば、IT部門は“何かあると怒られるから”と新しいチャレンジに消極的な傾向があります。そこで、社内で最先端製品のプリセールスを担当しているシステムエンジニアや、お客様先で厳しく鍛えられているフィールドエンジニアをIT部門へ投入、“お客様にも採用していただける最先端の災害対策システム”の構築を目標に掲げ、一丸となって全力疾走しました。

アクティブ・アクティブ運用を試してわかってきたこと

 “何かあっても確実にシステム復旧できる”という段階を達成できると、次に“何かあっても落ちないシステム”をめざしたくなるのは自然な要求です。ネットワンシステムズでも、アクティブ・アクティブ運用体制の実現に向けて、新たな取り組みをすでにスタートさせています。

 ここで重要なのは、運転を切り替える先としてのデータセンター選定です。広域災害が発生したとしても変わることなく事業を続けようとすれば、そのデータセンターが影響の及んでいないであろう地域にある必要があります。しかし、あまりに遠すぎるとデータ伝送遅延が発生して業務に支障をきたしますから、そこは落としどころを見極めなければいけません。また、そのデータセンターの運用力や、実質的なコストを把握するためにも、利用してみるに越したことはありません。

 当社では現在、そうした目的でいくつかのデータセンターの短期間利用を繰り返し、アクティブ・アクティブ運用を試しています。運用に関する詳細なデータを取得するとともに、地理的特性、発電環境なども勘案して比較検討し、最適なデータセンターを選定するつもりです。このデータセンター選定プロセスでは、データセンターを移るために定期的にバックアップ、リストア作業を行うことになり、はからずもIT部門のスキル強化につながっています。

 この運用を経験して感じたことは、アクティブ・アクティブ運用は最善ながら、システムすべてに適用する必然性はないだろうということです。ネットワンシステムズの場合、一時的に停止しても短時間で復旧すれば問題ないアプリケーションが大半で、それよりユーザー環境の方が緊急性が高く、一時的にでも使えなくなると生産性がガタ落ちになるため、アクティブ・アクティブ運用では、こちらを優先すべきであることが判明しています。



上図:「重要システム」は仮想データセンター(ストレッチクラスター)構成。
「一般システム」はアクティブスタンバイ構成

自信と安心に満ちたシステム環境は企業を変える

 仮想化を進めた先で確立した事業継続体制は、ネットワンシステムズに大きな変化をもたらしています。

 まず、このようなリファレンス化によって、お客様から大きな関心を寄せていただくようになりました。全体バックアップ2時間以内、全体システム復旧2時間以内、とご説明申し上げると、“一体、どのように実現しているのか”と、経営層の方々は膝を乗り出してこられます。また、IT部門の方々も“日常の運用状態を聞きたい”と、当社のIT部門担当者から話を聞くことを望まれます。

 もうおわかりだと思いますが、これによってIT部門も大きな自信を持つようになりました。“怒られまい”と保守的で内向きだったのが、世界的にも例のない挑戦に着手した結果、何かあっても全社をしっかり支えられるシステム環境を手にし、お客様に話を求められるまでになったのです。

 また堅牢さを増したシステムによって、社員全員がモチベーションを落とさず、高い業務生産性を発揮できる環境が実現。こうした自信や安心がベースになって生み出される仕事の成果は、今までとはおのずから違ってくると確信しています。

次回は仮想化で考えるべきセキュリティについて

 このように、仮想化という概念は、人々の働き方も変えれば、BCPの常識も変えます。もう一つ大きく変わるのがセキュリティです。従来、脅威といえば外部からやってくるものという前提がありましたが、今日、テクニックの巧妙化もあって、内部から加害者を出してしまう事態も発生するようになりました。仮想化が進む世界でどうすればそれを防ぐことができるか。ネットワンシステムズでの取り組みを例に、解説を進めていきたいと思います。

○関連情報:当社の「事業継続・災害対策 ソリューション BC/DR 」はこちら

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