サーバー仮想化の進展がもたらした新しいデータセンターネットワーク技術

ビジネス推進グループ
ビジネス推進本部 第2製品企画部 クラウドチーム
小瀬田 勇

概要

サーバー仮想化やクラウドコンピューティングの発展に伴い、ネットワークの世界も大きく変化し始めています。本コラムでは、新しいデータセンターネットワーク技術について複数回に分けて紹介します。
今回は新しいデータセンターネットワーク技術の背景となる、サーバー仮想化の進展とアプリケーションの変化についてふれ、次回以降では新しいデータセンターネットワーク技術の概要を説明していきます。

サーバー仮想化の進展

CPUの性能及び機能向上によるハイパーバイザーの柔軟性向上を背景として、物理サーバーの効率的利用を目的としたサーバー仮想化(サーバー統合)への取組みが進展して来ました。CPUの性能向上は、物理サーバーに対する更なる利用効率向上を求めることとなり、これに応える1つの手段として、仮想マシンをより高密度に実装していく方法が採られています。これは、コンピュータ資源としてのバランスを維持する為に、メモリの高速化と大容量化をもたらすことになりました。これらの進展によって、サーバー仮想化を前提としたシステムにおいてもユーザが期待する性能を提供することが可能になったことで、サーバー仮想化の市場が拡大しています。

ネットワークI/O性能の向上

物理サーバーに対する仮想マシンの高密度化が進むことで、ネットワークI/Oのボトルネックを解消することが次の課題となりました。ネットワーク帯域の拡大が必要とされ、”幾つかのネットワークポートを束ねて帯域の拡張を行う方法”と”より広帯域のネットワークを採用する方法”の2つの方法が代表的な解決手段として採用されています。現在、10Gイーサネット製品の多様化と市場の拡大により導入コストが低下したことと、配線の集約化によるクーリングの効率化や運用効率の向上などを背景として、特にデータセンターにおいては、10Gイーサネットの導入が増加しています。
帯域の拡大により、仮想マシンの高密度化を支えるネットワーク基盤の構築が可能になるにつれ、従来は余り意識されなかった、ハイパーバイザー上で稼働している仮想ネットワークによるCPUへの負荷を物理サーバー上のネットワークインタフェースカードや物理スイッチにオフロードする技術の利用に取り組み始めています。ネットワークインタフェースカード上で処理を行なう代表的な技術としては、PCI-SIGで策定されているSR-IOVがあります。また、IEEE802.1ワーキンググループ内のDCB(Data Center Bridging)タスクフォースにおいて、ネットワークカード上にトラフィックをオフロードする技術と物理スイッチに仮想マシンのトラフィックをオフロードする技術の標準化作業が進められています。これらの技術を実装した製品の登場によって、CPUの効率的な利用とネットワークI/O性能の向上が期待されています。

ストレージ・ネットワークの進展

ここで簡単にストレージ・ネットワークの進展にふれておきたいと思います。1980年代に規格化されたSCSIプロトコルは、DAS(Direct Attached Storage)として今日も利用されていますが、1990年代に登場したSCSI-3は、「SCSIコマンド」と「トランスポート」を個別に定義することで、大規模化するストレージへの対応やストレージの共有への対応を提供しましたが、同時に多様なトランスポート技術への対応が可能になったことで、コンピュータとストレージの間にネットワーク(SAN)を誕生させたとも言われています。SANにおける大規模ストレージを接続する標準規格としてFC(Fiber Channel)がありますが、現在は、イーサネットへの統合(FCoE)が規格化されています。
FCのイーサネットへの統合の背景としては、ケーブリングの簡素化やI/O統合にたいする市場からの要望があります。ケーブリングの簡素化やI/O統合によって、ラック内の物理的な配線数を劇的に減少させることが可能であり、これは運用負担の減少をもたらします。また、配線を減らすことによってラック内の空気の流れを乱す要素を減らす効果も考えられます。また、サーバー仮想化の進展をより押し進める技術としても注目されています。現在、ストレージ・ネットワークを実現する為のイーサネット技術への拡張として、IEEE802.1Qbb、802.1Qaz、802.1Qauなどの標準化作業が行われています。

ネットワークの仮想化

VLANやMPLSなどのネットワークを論理分割して仮想化する技術は既に確立しています。
また、サーバー仮想化を提供する側からは、単純な仮想ブリッジから高機能な分散仮想スイッチまで様々なネットワーク技術の提供が既に行われ、多くの場面で利用されています。分散仮想スイッチによって、仮想マシン間には従来のネットワーク技術が持つ潜在的な制約に囚われることの無い柔軟なネットワーク構成が可能になっており、物理的なネットワークトポロジーにとらわれない論理的に分割されたネットワークを構築することが可能になっています。
物理サーバーやストレージの仮想化によるメリットを拡大する為には、物理的に構成されたネットワークについても分散仮想スイッチのような従来技術とは異なるネットワークの仮想化機能を提供することも今後ネットワーク製品には求められると考えています。

アプリケーションの変化

サーバー仮想化の進展からネットワークの仮想化について記述してきましたが、ここではサーバーの上で動作するアプリケーションの変化について簡単に記述したいと思います。
従来の3層構造を基本とするデータセンターアーキテクチャは、クライアント・サーバー構造を基本とするアプリケーションに最適化され進展しています。その為、データセンター内の任意の位置に分散して配置されるようなサービスや分散型アーキテクチャを持つようなアプリケーションに対しては、非効率なネットワークアーキテクチャとなりつつあります。同時に、非常に大量のトランザクション処理への対応や大容量トランザクション処理への高信頼性の提供などストレージパケットへの要求にも対応する必要に迫られています。また、新しいサービスやアプリケーションでは、トランザクション性能がユーザビリティや性能の向上に繋がる為、低遅延でのパケットフォワーディング能力がネットワーク機器に求められており、アプリケーションの変化はネットワークに対する要求にも変化をもたらしています。

新しいネットワークアーキテクチャ

サーバー仮想化が進展したデータセンターにおいては、仮想マシン間の通信や仮想マシンとストレージ間のトラフィックがその多くを占めるようになってきています。更に、仮想マシンのライブマイグレーションが物理サーバーの効率化にとって有効な機能として活用されるようになり、VLANやQoSなどのネットワーク機能の設定が仮想マシンの移動に対して追従する機能も求められつつあります。
この様なサーバー仮想化の進展やアプリケーションの変化に対応する為に、新しいネットワークアーキテクチャが求められています。

現在、ネットワークベンダー各社は

  • ノード間の最短パス提供と低遅延処理の実現
  • 水平方向のトラフィックへ対応する為のマルチパス技術の提供
  • 管理の簡素化と自動化への対応

を実現するレイヤ2マルチパス技術を新たに提供することでこれらの変化に対応しています。

レイヤ2マルチパス技術の標準としては

  • Shortest Path Bridging(SPB)…IEEE 802.1aq
  • Transparent Interconnect of Lots of Links(TRILL)…IETF Internet-WG

が挙げられます。

SPBは、IEEE 802.1aqで規格化されており、主にデータセンター内で使用されるSPBVとデータセンター間で使用されるSPBMという2つのモードがあります。IS-ISベースのルーティングアルゴリズムを採用することで回線帯域の有効活用が可能になっています。現在、Alcatel-Lucent、Avaya、Huaweiから対応製品が出荷されています。
一方、TRILLは、IETFのInternet-WGの下で標準化作業が進められています。ホップ毎に経路計算をするアルゴリズムを取り入れることで、SPBに比べてレイヤ3に近いルーティングアルゴリズムが採用されています。現在、Cisco、Brocade、Extreme、Force10(Dell)、Blade Networks(IBM)から対応製品が出荷されています。
その他に、論理プレーンとデータプレーンを明確に分割し、論理プレーンの解放によってエンドユーザーが自由なネットワークトポロジーを構築可能となるOpenFlowの登場や、ネットワーク機器と仮想マシンとの連携をより意識したNVGREやVXLANなどの新しいネットワークアーキテクチャについても標準化や製品の提供が進んでいます。

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