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ビジネスの速度に追いつくITインフラを作る - 未来のIT部の役割とは

ライター:井上 勝晴
2002年にネットワンシステムズ入社後、応用技術部にてVoIP/Mobile/Telemetry等の通信キャリア様向けの技術を担当
2019年4月より、現職であるNet One Systems USA,Inc.に勤務
米国シリコンバレーに駐在し、Innovation調査と新興企業の発掘業務に従事
妻と娘(6歳)も一緒に渡米しており、家族でのベイエリア生活を奮闘しながらも楽しんでいる。家族で米国の国立公園に行くのが最大の楽しみ。

目次

ONUG Spring 2022

前編のブログに引き続きまして、後編の本稿でもONUG Spring 2022で議論された注目トピックとトレンドをご紹介します。また併せて、弊社ネットワンシステムズのONUGでの取り組みも紹介させていただきます。

デジタルエンタープライズが実装フェーズに - 見えてきた現場の課題感と方法論

以前のブログでもご紹介していますが、2年前の2020年、ONUGはデジタルエンタープライズというキーワードを発信しました。このデジタルエンタープライズは、俊敏性やスケーラビリティが高い、最新テクノロジーを使いこなす組織として表現され、その理想像は「IT部門にそれぞれの業務向けにツールを用意してもらいそれを使うという形ではなく、企業におけるすべてのステークホルダーがビジネスの拡大や効率化に向けてビジネスプラットフォームとしてのクラウド(技術)を積極的に使いこなす姿」としても表現されています。
今回のONUG Spring 2022では、このデジタルエンタープライズに向かう過程、IT運用現場の生の声、ディスカッションを複数のセッションで聞くことができましたので、その幾つかをご紹介します。

ITチームは10年後にも存在しているか? - S&P グローバル / モルガン・スタンレー

Will IT teams exist for the next 10 years?(邦題:ITチームは10年後にも存在しているか?)のトークセッションでは、S&P グローバルとモルガン・スタンレーの大手金融企業のIT担当社が参加し、現場視点・ユーザー視点からの、ITチームの10年後の未来予測がなされていました。

  • 現在のITにおける人材不足は10年後も続いているであろう。オンプレミス、エッジ、マルチクラウドなど、ITの複雑性が増して且つスケールもするので、人材不足はより顕著となる。
  • ビジネスサイクルは更に加速し、ITに求める速度も同様に加速する。(ビジネスの速度にITが追いつく必要がある)
  • ローコード・ノーコードに代表されるテクノロジーの民主化で、ビジネス側が業務アプリ・システムを作る時代が来るが、作り上げたアプリ・システムにガバナンスを効かせるにはIT部の関与は必須となるであろう。

このように比較的ポジティブな未来予測ではありましたが、その前提は、未来のIT部が従来のやり方に固執するのではなく、「メタバース、AI、デジタリゼーション、オートメーション」といったテクノロジーを柔軟に使いこなす姿を想定したものでありました

AIOpsの体験談 - eBay

10年後の未来予測でも言及されたIT現場におけるAIの積極活用については、eBayのRick Casarez氏による「Evolving Network Operations Through the power of ML(邦題:MLで進化するネットワーク運用)」が興味深いものでした。
同社のAIOps導入前のネットワーク運用は人間をベースとしたものであり、日々生成されるインシデントの対応でITチームが疲弊していたようです。「多すぎるシグナルはノイズでしかない」と同氏は語り、eBayの大規模ネットワークに適した改善施策を探していた中、Augtera Networks社のAIOps製品に出会い導入したとのことでした。同製品が提供する機械学習によるデータ解析機能により大量のインシデントは整理され、人の目では追つかなかったシステム変異(アノマリ)を障害予兆として把握出来るようになったとのことです。またネットワークインフラを理解し描画したネットワークトポロジー上に障害予兆などのインシデントをオーバーレイして表示する機能を利用することで、管理者が障害ポイントを直感的に把握することが可能となり、IT運用がプロアクティブとなったと言います。

数値的な達成度では、

  • チケットキューの大幅な削減(90%)
  • MTTD(問題平均検出時間)にて98%の改善
  • MTTM(問題平均解消時間)にて59%の改善
  • MTTR(問題平均修復時間)にて44%の改善

であり、AIOpsによるネットワーク運用の最適化は成功したと言えるでしょう。ただ、この成功例は同社がAIOps前に機器のSSOT(Single Source of Truth)を実現しており、AIOpsがこのSSOTをAPI経由で取得できた点もあり、このような要素も大きく貢献しているようでした。

NetworkをCI/CDパイプラインに統合するには? - Citigroup / Cigna

自動化については、来場者参加型のトークセッション:How Networking is Being Integrated Into CI/CD Pipeline (邦題:NetworkをCI/CDパイプラインに統合するには?) にて、興味深いディスカッションがなされていました。

  • アプリやシステムから見たネットワークインフラはEnabler(目的達成を可能にするリソース・手段)のようなもの。
  • アプリ側からのネットワークへの要求レベル、特に対応速度が上がって来ている。(求められる展開速度が早まっている)
  • 求められる速度で対応するにはモジュール化が必須、Terraformなどの要素技術でコード化し、それをCI/CDパイプラインに入れて統合管理するのが理想であろう。
  • しかし、アプリ・システムがCloud Nativeであることが前提となるので簡単ではない。
  • Cloud Native化にはシステムだけではない人間的な要素も実は重要。故に担当者間のコミュニケーションが容易となる企業文化も重要となる。

パネリストからは「実は今も悩んでいる、どうするのがベストなのか分からず試行錯誤している」このような生の声・コメントもありました。

ネットワンシステムズの取り組み - Opsにコスト観点を組み入れる

弊社ネットワンシステムズはONUGにメンバーとして参画しており、ONUG 2022 Springでは、Network運用オペレーションにコスト視点を付与する「FinOps」のコンセプトをElastic Infrastructureをベースとするネットワンアーキテクチャに投入するコンセプトデモを実演しました。ITのコスト管理は未だ成熟した分野とは言い難いため、オンプレミス・パブリッククラウドから幾つかのメトリックを抽出してコスト計算をするアプローチを自ら定義し、そのコンセプトを発表させていただきました。
ネットワンシステムズによるデモ動画は以下より視聴可能ですので、是非ご覧いただければと思います。

NetOne Systems Proof of Concept: Governing Multi-Cloud with Continuous Monitoring and Policy Control

まとめ

ビジネスサイクルが変化したことで、企業のIT担当に求められる対応速度は劇的に加速しています。ネットワークインフラが企業活動のEnablerとなるには、求められる速度に柔軟に対応するための「標準化、モジュール化、自動化、AI活用」を適切なガバナンスで実現する必要があります。またこれらは最適なコストで実現される必要があります。
その実現をサポートするネットワンシステムズを、今後とも宜しくお願いいたします。

参考:

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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