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NEXT GIGA(スマートスクール)へ ~ スムーズなクラウド利用をはばむものは? ~ その2

ライター:阿部 豊彦
経歴:エンタープライズ系インフラの提案、設計、構築や、SDN提案、
工場IoTネットワークやセキュリティのコンサルなどを担当。
ファシリティ、インフラ、セキュリティなどボーダーレスです。
昨年末から文教フィールドへ参入。

目次

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その1 通信速度(通信帯域)(Wi-Fi(無線LAN)区間、有線LAN区間)編

その2 通信速度(通信帯域)(外部回線の利用)編

その3 通信速度(通信帯域)(デジタル教科書と学校サーバ)編

その4 セキュリティ(Wi-Fi(無線LAN)区間)編

その5 セキュリティ(有線LAN区間、外部回線の利用、テレラーニング)編

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■ ボトルネックは学校の外に?

多くの学校で「インターネットが遅い」という声を以前からたくさん聞きますが、本当のボトルネックはここ?

   図38.png

通信のボトルネックが発生すると考えられる部位(例)

その2 通信速度(通信帯域)(外部回線の利用)

■輻輳という破局状態

「ネットワークでの輻輳」は、有線や無線のネットワークに通信が集中している状態をいいます。高速な有線LAN通信と低速な外部回線の間でよくおこる現象です。ネットワークで輻輳が発生すると、再送が頻繁になったり、データ廃棄が発生したりして通信速度が低下したり、無線の場合はWi-Fiがつながりにくくなったりといった現象が発生します。また、場合によってはシステムがダウンすることもあります。すぐさま解消するには、PCの通信をいったん止めるしかありません。

この輻輳状態に陥るのを回避するには、外部回線をできる限り高速化し効率的に利用するしかありません



図40.png

■外部回線

さて、外部回線ですが、文部科学省の「GIGAスクール構想の実現標準仕様書」では、

.ネットワーク回線

(1)概要

学校からの接続は直接インターネットに接続する場合と、教育センターやデータセンターに集約して接続する場合がある。学校からのネットワーク回線は帯域保証や信頼性のあるギャランティ型サービス(1Gbps 程度)、もしくは安価で高速通信の可能であるが帯域保証のないベストエフォート型サービス(最大 1Gbps)にて接続すること。但し、校内における接続PC数を考慮して、回線を選択すること。


と記載があり、2つのインターネット利用構成が述べられています。

ほぼこの「学校個別型」と「センター集約型」の二択となると考えます。
学校個別型」構成は、ローカルブレークアウト(LBO)と呼ばれ、一般企業でも使われる、通信を外出しする手法です。
センター集約型」構成は、PC台数が少ない旧来の学習系インターネット接続を増強する手法です。

どちらを選ぶか?

LBOを選択する二つの視点があります。

一つ目は、通信量(通信帯域)の増加に対応できるか?

二つ目は、Office365のような多数のセッションを消費する新しいアプリケーション利用者を多数収容できるネットワーク設備か?

センター集約型」では、従来にないインターネット通信量を学校から受け取るために、学校用回線の増速増強が必要となります。さらにセンターのインターネットセキュリティ機器の大型化センター回線の増速増強が必要となります。センター回線は、すべての学校の増速分を収容するため一桁高速化する必要があるかもしれません。

学校個別型」では、学習系のインターネットへの通信をすべて、または一部を新たな回線に逃がせます学校ごとに通信量やセッションの増加に対応できることになります。(センターから見た学校への負荷分散イメージ)

さらに「ギャランティ型回線(1Gbps)」と「ベストエフォート型回線(1Gbps)」の選択もありますが、コスト面から「ベストエフォート型回線」の一択なりそうです。現実的に1Gbps「ギャランティ型回線」を使ってデータセンターへ多数の学校が接続しても、データセンターのサーバやセキュリティ機器、インターネット回線が耐えられないでしょう。

  

「学校個別型」と「センター集約型」の比較表

   図41.png

回線種の比較イメージ

■LBOとインターネットアクセス回線

仮想学校(NOS校)での試算。

小学校6学年、例えば生徒720人(各学年120人)およそ各学年4クラスとすると、
各クラス1時限中に10分間通信すると、おしなべて1学年で平均30人が40分間の通信している状況と考えられます。

 2Mbps x(30人x6学年)=360Mbpsが最低必要な回線帯域となる。(2Mbpsは平均的なビデオ利用通信量)

現実はランダムにクラスごとに通信が発生するので、この数倍の通信が一時的に流れる可能性があります。
(また、このようなインターネットを頻繁に使う授業形式に、デジタル教材の導入にともない徐々に移行するのではないかとも考えます。)

授業時間に10分も通信するのは長いのでは?と思われるかもしれませんが、40人が動画視聴するような場合、結構長い時間ほそぼそと通信が続きます。

   図5.png

   こんなに統制が取れたインターネットの利用はあり得ませんが、いったん計算上検討してみます。

   図6.png

LBOで、コスパの良い「1Gbpsベストエフォート回線」を利用する場合、一般的に利用状況・環境によって変わりますが100Mbps程度の回線利用が上限ではないか?と想定します。NOS校では360Mbps(平均状態)必要と考えると、全く足りません。

Question:    では、どうすれば外部回線のコスパを追求できるか?

Best Answer:  複数のベストエフォート回線で負荷分散させる方法を考えます。

世の中には、回線負荷分散をアプリ毎に分けたり、均等負荷分散を目指したりと高級な拠点ルータがあります。ここでは、非常に単純にインターネットアクセスの「ベストエフォート型回線」と「学年」を紐づけることで複数のベストエフォート回線に負荷分散させます。(ここで、同時に有線LAN区間のオーバーサブスクリプションを解消できればベストなわけです。)

 

   単純に学年ごとに外部回線を用意する。Nuro光、USEN光、フレッツ光、将来の5Gなどを利用するイメージ例です。

複数のインターネットアクセス回線を用いる場合、同じ系の光回線を選ばないこと。特に表にある「フレッツ光コラボレーション」に該当するアクセス回線サービスは同じフレッツの光ケーブルを共用しますので、この中から複数のアクセス回線を選択しないことが必要となります。また、アクセス回線は、それぞれの業者ごとに提供エリアが決まっていますので、事前に確認すべきです。

NTT東西フレッツシリーズ 学校向け特別料金で提供しているようです。

MEMO
NTT東日本
フレッツシリーズ 学校向け特別料金(https://business.ntt-east.co.jp/service/schoolplan/
NTT西日本
フレッツ・シリーズ学校向け特別料金(https://flets-w.com/limited/school/

 図39.png

■5Gの利用

5Gアクセスできる通信機能を内蔵・外付けしたPCを使い、PC個別に5Gアクセスさせるのはコスト的問題がありそうです。
従来、LTE(4G)回線は低速かつ従量課金ゆえに、バックアップ回線として使われることがあります。拠点に外部接続する「4Gルータ」です。これに変わり、5Gを主回線として拠点(学校)の外部接続に利用することは、理にかなっています。(コスト面はこれから明らかになります)ただ、電波の直進性が高いミリ波(28GHz帯)を利用しないと大量にデータを送れません。
したがって、5Gの基地局アンテナが直視できるところに、「5Gルータ」のアンテナを取り付ける必要があります。アンテナを建物などの影にならないように配置しないと、十分なデータ転送ができなくなります。また、自動運転と同じように天候によって状況が変わる特性もあります。将来に期待です。

■SINETの利用

ほかにも、学術情報ネットワークSINETの利用、IPv6という案もありますが、ここでは割愛します。



■拠点ルータのキューイング

ルータやスイッチには入力・出力する際のキュー(データを一時蓄えるメモリ)があります。増えてきた通信データをキューに一時保存し、決められた順番に送信するようになっています。この時、送信遅延が発生します。つまり、回線が遅くてもキューに一時データを蓄えることで、順次回線へデータを送り出せます。キューサイズを超えるデータは破棄されてしまいます。また、シェイピングや帯域保障という考え方もあります。

スイッチはキューのサイズが小さいので、スイッチを拠点ルータの代わりにつかうと、すぐにデータが破棄されてしまうでしょう。

拠点ルータでの継続的な外部回線利用状況の監視をお勧めします。弊社では、Cisco Systems社製ルータの
「ネットワークアセスメントサービス(利用状況調査)」を提供しています。

その3では、教材アプリと学校サーバで通信帯域を効率的に利用する方法を説明します。


その3 通信速度(通信帯域)(デジタル教材と学校サーバ)編へつづく

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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