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その1. GIGAスクール構想「タブレット充電保管キャビネット」仕様について①

ライター:阿部 豊彦
経歴:エンタープライズ系インフラの提案、設計、構築や、SDN提案、
工場IoTネットワークやセキュリティのコンサルなどを担当。
ファシリティ、インフラ、セキュリティなどボーダーレスです。
昨年末から文教フィールドへ参入。

目次

「GIGAスクール構想」は、日本のすべての学校での「一人一台 学習者用端末」整備に向けて大きく進みだしました。そこで問題になるのは、学習者用端末(以下 タブレット と表記)の安全な保管と充電です。充電する時間は夜や深夜と想定されますが、その電流量が問題。資産管理という側面では使っていない間も安心安全の保管をしなければなりません。これら問題を解決するのが「タブレット充電保管キャビネット」です。

ネット上の情報や、実際にメーカを訪問しヒアリングした結果と隠れたポイントをまとめてみました。

・その1.2. GIGAスクール構想「タブレット充電保管キャビネット」についてまとめてみました
 では主に仕様についてまとめています。

・その3.4. GIGAスクール構想「タブレット充電保管キャビネット」についてまとめてみました
 では主に輪番充電についてまとめています。

・付録編. GIGAスクール構想「タブレット充電保管キャビネット」についてまとめてみました
 では実際の充電電流値についてまとめています。

■さて、どう呼べばいいのか?

「タブレット充電保管キャビネット」という呼び方でその機能や役割はわかると思いますが、業界標準的な呼び方がないようです。メーカによっては「タブレット充電収納保管庫」、「タブレット充電保管庫」、「ノートPC収納カート」、「チャージングカート」などさまざまです。このブログの中では「タブレット充電保管キャビネット」とします。

■利用シナリオを描く

キャビネットの運用ポリシーというより、収容されるタブレットの「運用ポリシーとセキュリティ」が重要となります。

  • タブレットの校外持ち出しを許可するか?
  • 長期休暇のときの保管は?
  • タブレットを各教室別々に保管するのか?

タブレットの運用方法によってキャビネットの「固定/移動」や「置き場所」が決まります。

== キャビネット運用例の表 ==

長期休暇時に余裕教室にまとめて保管する場合、ある程度の換気(温度管理)と防犯システムの導入が推奨されます。また、次項で説明する「重量の問題」は要注意です。

== キャビネットの運用例の図 ==

キャビネットの特徴はメーカによって全く異なります。どういう視点にフォーカスして製品化しているのか? そもそもの祖業が異なっているため、メーカの数だけバリエーションがあるといえる状態です。

■現場の課題①~⑩

① 設置環境、物理的空間的制約(教室の中に固定的に置く場所がない)
② 電力的制約(電流量が多くブレーカ断が心配)
③ 固着、地震対策(キャスタ付きキャビネットの固定)
④ 生徒の使い勝手(タブレットの大きさとキャビネットからの取り出し、収容のしやすさ)
⑤ タブレットのモビリティ校外への長時間持ち出し)
⑥ 電源アダプタ(キャビネット内のコンセント配置)
⑦ 教職員の利便性(簡単に使えるか)
⑧ 教室のBCP/DR(緊急対応)
⑨ 物理的制約(仕様)
⑩ コンセント形状

※本記事では、①~③までをご紹介し、その2. 記事で④~⑩について記載いたします。

① 設置環境、物理的空間的制約(教室の中に固定的に置く場所がない)

キャスタ付きの場合、設置床面積90x70cm、高さ100cm程度の大きさのキャビネットをどこかに据え付けるのか。現実的に困難な場合もあります。また移動できるがゆえに盗難の危険性も考慮しなければなりません。また、据置キャビネットの場合は、設置場所によっては電源工事が必要になるかもしれません。

== 普通教室面積の基準 ==

「鉄筋コンクリート造校舎の標準設計」(昭和25年) 63 ㎡
(1.575 ㎡/人【40 人基準】)
「公立学校施設費国庫負担金等に関する関係法令等の運用細目 74 ㎡
(1.85 ㎡/ 人【40 人基準】)

もう少し話をまき戻すと、どこに置くか?の前に キャビネットを置くということにより、「床の耐荷重」という重大な問題が隠れています。
この床には、どのくらいの重量物を置けるか? という建築構造上の制限です。

== 建築基準法 積載荷重(床設計用の積載荷重) ==

教室 2300N/m2  (約234Kg/m2)・・・意外に低い!!
住宅の居室 1800N/m2 (約183Kg/m2)
事務室 2900N/m2 (約295Kg/m2) 一般に300Kg/m2以上といわれている項です。

例えば、Surface Goの場合。

本体(約522g~)+キーボード(約243g)+ACアダプター(約137g): ‎合計約902g
—フル装備では、オプションのSurfaceペン(約20g)、
Surfaceモバイルマウス(約78g)=総重量は約1Kg

タブレット 収容台数 キャビネット WxD 重量 占有床面積 荷重
0.9Kg 30台 据付キャビネット1段 52.6Kg 60x45cm 79.6Kg 0.27m2 295Kg/m2
1.2Kg 40台 キャスタ付きキャビネット90Kg 90x60cm 138Kg 0.54m2 256Kg/m2

(キャスタの位置を基準とするともっと厳しい数字になります)

特に古い校舎などでは、一か所にキャスタ付きキャビネットをまとめて長期保管するような場合、床が抜ける可能性があります。地震に耐えられないかもしれません。小型キャビネットに分散する必要があるかもしれません。軽さは重要なファクタです。

② 電力的制約(電流量が多くブレーカ断が心配)

夜の電力で充電するEV的運用が想定されますが、その電流が結構膨大な数値となります。タブレットやPCによって充電時に流れる電流は異なりますが、タブレット1台500mA(350mA~750mA想定から多めの代表値)とし、最大40台をまとめて充電する場合 20A(AC100V)の電流が夜の時間帯に流れ続けることになります。一般的にAC100Vのブレーカは20A、コンセント一つの最大電流は15A。ですので、これは問題です!
また、現実的に今教室に用意されているコンセントにどれだけの余剰供給能力があるか?わからない場合もあります。

こんな場合に備えて、キャビネットメーカは様々な「輪番充電機能」(※詳しくは後編で)を提供しています。
(もちろん、新規に電源工事で1回路(20A)を新設すればこの課題は解決にむかいます。)

さらに、学校全体としての夜のAC100Vの電流量が膨大です。
キャビネットの電流量6Aを、小学校6学年、3クラスが夜に流し続けると

6A x 6 x 3 =108A

学校全体で、従来の電流量に加えて最大108Aが夜に流れるわけで、こちらも要確認事項となります。

③ 固着、地震対策(キャスタ付きキャビネットの固定)

地震対策としてキャビネットを固定する「キャスターホルダー」と言われる固定具があります。ストッパー効果が少ない重量用キャスタ用として開発されたキャスターホルダーです。

キャビネットは重量がありますので、車輪の真横から差し込むタイプや、鎖やワイヤでつなぎとめるタイプが便利そうです。

重量用キャスターホルダーイメージ(車輪の横から差し込む)

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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