掛け声だけで終わらせない、デジタルトランスフォーメーション成功の鍵【前編】 ~日本のDXの現状「事件は現場で起きている!」

掛け声だけで終わらせない、
デジタルトランスフォーメーション
成功の鍵【前編】


~日本のDXの現状「事件は現場で起きている!」

ここ数年ほどの間で、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉がにわかに注目を集めるようになりました。DXの実現にはアジリティ(俊敏性)の向上が必要ですが、アジリティ向上のために、IT 部門はどうあるべきなのでしょうか。「掛け声だけで終わらせない、デジタルトランスフォーメーション成功の鍵」では前後編にわたって、日本のDXの現状と私たちを取り巻く環境、課題や取り組むべきことについて考察します。

Index

思うように運ばないデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み

ここ数年ほどの間で、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉がにわかに注目を集めるようになりました。AmazonやUberに代表されるように、デジタル技術を武器に瞬く間に業界を席巻する企業が次々と登場しています。こうした新興企業は、業界の古い慣習やビジネスモデルを破壊する「ディスラプター(破壊者)」と呼ばれ、旧来のビジネスモデルを基に長らく業界に君臨してきた伝統的な企業の存在を脅かすまでになりました。

今後、市場で存在感を示しこのDX時代を生き抜くためには、すべての企業がビッグデータやAI、IoTといった先進IT技術を使って自らがディスラプターとなり、旧来のビジネスモデルを破壊していくことが求められます。

すでに米国を中心とした海外では、DX に積極的に取り組む企業が登場してきており、一定の成果を上げています。しかしその一方で、DX 推進の掛け声だけは勇ましいものの、その具体的な取り組みが一向に進まない企業も少なくありません。むしろ、現時点ではそうした「掛け声だけのDX」に終わってしまっている企業が多数派と言えます。

すでに米国を中心とした海外では、DX に積極的に取り組む企業が登場してきており、一定の成果を上げています。しかしその一方で、DX 推進の掛け声だけは勇ましいものの、その具体的な取り組みが一向に進まない企業も少なくありません。むしろ、現時点ではそうした「掛け声だけのDX」に終わってしまっている企業が多数派と言えます。

思うように運ばないデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みイメージ

「原資は変わらないのにやることだけが増える」DX 推進のためのリソースはどこから捻出するのか?

DXの目的は、先進IT技術を活用することで新たなビジネスモデルを生み出し、企業の収益向上に貢献することにあります。企業はDX推進のために、これまでにないまったく新たなビジネスモデルと、それを支えるシステムを運用することになります。つまり、既存のITシステムはこれまでどおり安定運用しつつ、同時にDXに必要な新たなITシステムの構築にも取り組んでいく必要があるのです。

当然のことながら、これまでより多くの人手とお金が必要になってきます。DX実現のためには、サービスやアプリケーションだけでなく、それらの稼働を支えるITインフラやネットワークにもこれまでにない新たな要件が求められます。またビッグデータやAI、IoTといった技術を取り入れるためには、そのために最も適したインフラを調達し、コスト効率なども加味しながら運用するノウハウが必要になります。

このように、DX に本気で取り組むためには、新たなスキルやノウハウを持つ人員が必要になります。そのため企業によっては専門部署を新設したり、従来のIT部門に加えて、新たにDX推進のためのいわば「第二情シス」のような部署を設ける企業もあります。しかし残念ながら、ほとんどの日本企業のIT部門は既存システムの運用に手一杯で、とても DX のために新たに人員を割くだけの余裕がありません。

特にインフラ分野においては、新たなリソースやスキルの必要性がなかなか理解されず、結果的にDXによってIT部門の仕事は増えるものの、人はなかなか増えないという状況に陥りがちです。これではIT部門の現場の人間が、「現場の状況も知らずにDXと言われても」と、なかなか前向きになれないのも無理からぬことです。

「原資は変わらないのにやることだけが増える」DX 推進のためのリソースはどこから捻出するのか?イメージ

DXに必須の「アジリティ」をどのように確保するか?

DXの重要性を理解し、そのための投資の必要性を認識できたとしても、無尽蔵に予算を投入できる企業は多くないでしょう。限られた予算をやりくりしながら、事業計画を遂行していかなくてはなりません。

となると、どうしても既存のシステム運用のコストを削り、その分をDXの原資に充てるほかありません。しかし多くの企業では、すでに極限までシステム運用の人員を絞り込んでおり、長時間労働によって何とかぎりぎりのところでシステム運用を回しているのが実情です。そんな現場にとって、さらにコストを削れと言われても、「これ以上雑巾を絞っても、何も出てこない」というのが本音ではないでしょうか。

DXにおいて最も大事なのは「スピード」と「アジリティ(俊敏性)」です。あらゆる業界において、消費者の嗜好が移り変わるスピードは年々速くなっており、これにいち早く追随して斬新なサービスを競合他社に先駆けて投入することが、市場において勝ち残るための最重要ポイントとなります。

DXに必須の「アジリティ」をどのように確保するか?イメージ

当然のことながらビジネスを支えるITシステムにも、できるだけ早くアプリケーションやサービスを立ち上げ、市場にいち早く投入できるだけの高いアジリティが求められます。しかし現実は、いまだに多くの企業が新たなサービスの開発に半年~1年以上の期間を要しています。ディスラプターに対抗して、斬新なサービスを次々と市場に投入するためには、サービス開発からリリースまでの期間を大きく短縮する必要があるのです。

そのために、近年ではアプリケーションを迅速に開発するためのアジャイル開発手法や、より高速にサービスをリリースするためのDevOpsの方法論が普及しつつあります。しかし、サービスが稼働する肝心のインフラがアジリティを欠いていては、こうした努力も無駄に終わる可能性があります。せっかくアプリケーションを数週間で開発できたとしても、ネットワーク環境の構築に何か月もかかるようでは、デジタル時代のスピード感に明らかに後れを取ってしまいます。

そもそも日本国内で本当にDXは起きているのか?

ちなみに現在日本国内では、企業のDXの取り組みはどのあたりまで進んでいるのでしょうか? 2018年8月に調査会社の米IDCが世界各国の1987人のデジタルリーダーを対象に行った調査(※1)によれば、日本およびアジア太平洋地域の企業のCEOは、他の地域の企業のCEOと比べてDXを成功させなければいけないというプレッシャーが相対的に弱いという結果が出ています。また、北米とアジア太平洋地域(日本を除く)の企業は、DXの投資に関して長期的な観点から予算化を行っているのに対して、日本および西欧の企業は予算化するよりも、既存のITコストの削減などでDXの予算を捻出しているという結果も出ています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)イニシアティブにおける世界の地域差に関する5 つの考察

※1 出典: IDC Japan 株式会社
「デジタルトランスフォーメーション(DX)イニシアティブにおける世界の地域差に関する5 つの考察」(2018)

このように日本企業は海外と比べると、相対的にDXの取り組みに消極的な印象を受けます。では海外では、日本よりはるかに多くのDXの事例が出てきているのかと言うと、必ずしもそうとは言い切れません。確かに前出のAmazonやUberをはじめ、海外では多くのディスラプターがさまざまな業界を席巻しており、その多くは日本市場においても大きな存在感を示しています。その一方で、こうした新興企業に対抗するためにDXでビジネスモデルを変革しようという伝統的な企業の試みは、米国においても成功例はまださほど多くありません。

日本企業においては製造業を中心に、IoTやAIなどの技術をいち早く取り入れる企業も増えてきましたが、一方で企業の現場レベルでは、まだまだDXに対して「流行のバズワード」「ITベンダーによる売り文句に過ぎない」といったネガティブなとらえ方が多数を占めているようです。

まだ明らかな成果を挙げた事例が多いとは言えないため、こうした見方になるのも無理からぬことかも知れませんが、一方で先進技術を武器に新興企業が次々と市場に参入し、既存のプレイヤーのシェアを奪いつつあります。こうした状況に後れを取らず対処していくためには、自らも先進技術を取り入れ、既存のビジネスモデルを大胆に変革していく以外に方法がないのもれっきとした事実です。

ここまでの内容で、DXに向けた取り組みには、人的リソース・予算・アジリティという大きく3つの課題があり、そのために掛け声ばかりで進まないという実情が見えてきました。限りある人的リソースと予算の中で、はたして打つ手はあるのでしょうか?

続く後編では、それぞれの課題を紐解き具体的な解決策を探ることで、DX成功の鍵に迫ります。「掛け声だけで終わらせないDX」のヒントとしてお役立てください。

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