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CATVの世界にもSDNがやってきた!!
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ビジネス推進本部 応用技術部
コアネットワークチーム
大澤 能丈
近年、ネットワークの世界においてSDN(Software Defined Networking)と呼ばれるアーキテクチャが登場し、ネットワークをソフトウェアで制御できるようにする考え方が広まってきました。CATVアクセスネットワークの分野でも、SDNの利用が議論されてきており、1つの形としてオープンソースの SDN コントローラであるOpenDaylightにおいてPCMM(PacketCable Multimedia)モジュールが実装されました。
本コラムでは、この実装について紹介させていただきます。
PCMMとは
PCMMの説明の前にPacketCableについて説明します。PacketCableはCableLabs®で規定されたインタフェース仕様で、HFC (Hybrid Fiber Coaxial) 上でIPベースの音声、ビデオ、およびその他の高速マルチメディアサービスのインターオペラビリティを提供するために策定されています。具体的な用途としてはHFCでVoIPサービスを提供するために、優先制御、低遅延等のQoSを動的に提供することのできる仕様となります。この動的なQoSはダイナミックQoS(以下DQoS)と呼ばれます。
PCMMはPacketCableの拡張仕様になります。DOCSIS(Data Over Cable Service Interface Specifications)およびPacketCable をベースとして、QoSが必要とされるマルチメディアアプリケーションをサポートするためのコアアーキテクチャフレームワークを定義しています。
PCMMフレームワークの構成とその役割は以下の通りになります。
(1). Application Server | Clientからのリクエストを処理してApplication Managerへ転送する |
---|---|
(2). Application Manager | Application Server からの要求を元にQoSサービスを管理する |
(3). Policy Server | Application Manager からの要求を元にQoSポリシーを定義する |
(4). CMTS (Cable Modem Termination System) |
CATV事業者側に設置される集合モデム装置 Policy Server からの要求を元にCable Modemと連携しDQOSを提供する |
(5). Cable Modem | 宅内に設置のケーブルモデム。CMTSと連携しDQoSを提供する |
(6). Client | リクエスト要求するクライアント(Cable Modem配下のPC等) |
表1:PCMMフレームワークの役割
PCMMで規定されたインタフェース要件を利用することでCATV事業者がCMTS / Cable Modemと連携した不要なトラフィックや優先トラフィックを制御するようなアプリケーション ・サービスの提供が可能となります。
OpenDaylight連携の背景
このように、PCMMを利用するためには、CMTS / Cable Modemに加えて外部のコンポーネントが必要となります。例えば弊社ではDPI装置とPCMM機能を連携したCATV向けトラフィック最適化ソリューション提供しています。
(参照:トラフィック最適化ソリューション)
これらは、高機能かつ、高価な製品となるため、簡単に導入できるものでは無いと言えます。
しかし、OpenDaylightにおいてこのPCMMをサポートしたモジュールが提供されるようになり、比較的安価に実装することができるようになりました。
OpenDaylightは2013年4月にLinux Foundationによって発足したプロジェクトで、商用での利用を目的として開発された、オープンソースのSDNコントローラです。このプロジェクトにCableLabs®も参画し、CMTSとCable Modemの間でDQoSを生成し、サービスフローを管理するためのPCMMモジュールが開発されました。次の章でOpenDaylightでのPCMMの動作について紹介します。
OpenDaylight PCMM動作検証
今回、最低限の構成として、OpenDaylight (Boron-SR3)、CMTS(ARRIS社製、Cisco社製CMTSでそれぞれ確認)、Cable Modem(DOCSIS3.0準拠)を準備しました。また、OpenDaylightに対してAPIを実行するためのツールとしてPostmanを使用しました。また、Cable Modemに接続するClientとしてWindows PCを使用し、PCから上位に対してトラフィックを送信しそのトラフィックを制御するといった一連の動作検証を実施しました。
以下に実施内容を記載します。
1.事前準備
[1]. PCMMモジュールのインストール
OpenDaylight上でPCMMに関連したモジュールを以下のコマンドでインストールします。(OpenDaylightのインストールについては本コラムでは割愛させていただきます。)
[2]. CMTS設定
CMTS側においてPCMMの有効化と、PCMM用に割り当てるQoS設定を行います。ここでは最大速度を50kbpsに抑えたQoSを作成しています。
2.CMTS登録
それでは実際に、OpenDaylightに対してAPIを実行して、PCMMを動かしてみます。まずは、OpenDaylight に連携先のCMTSを登録します。APIでの実行になるため、HTTPメソッドPUTにて以下例のようなJSONフォーマットのBodyを埋め込んでOpenDaylightに送信します。
URIは<http://[OpenDaylightのIPアドレス]:8181/restconf/config/packetcable:ccaps>になります。
API実行後CMTSのコマンド上でOpenDaylightの登録情報が参照できます。
3.DQoS割り当て
次にDQoSを割り当てるCable Modemと対象のトラフィックを登録します。本検証ではクライアントPCから10.1.1.27に対して約2 Mbpsのトラフィックを送信しており、この宛先のトラフィックを分類して、最大速度50Kbpsに抑えて送信するQoSを割り当てます。つまりAPIで以下の3つの情報を送り、CMTSに対してPCMMを実行してQoSを割り当てます。
- 対象クライアント:ここでは107.10.100のCable ModemのIPアドレス
- 対象トラフィック:ここでは宛先1.1.27/32のIPアドレス
- 割り当てQoS:ここではCMTSで事前設定した" extrm_up"という名前の上りのQoS (CMTSで最大速度50Kbpsに設定されている)
先程のCMTS登録と同様に、APIでの実行になるため、HTTPメソッドPUTにて以下のJSONフォーマットのBodyを埋め込んでOpenDaylightに送信します。
URIは<http://[OpenDaylightのIPアドレス]:8181/restconf/config/packetcable:qos>になります。
■DQoS割り当てのリクエストBody例(JSON形式)
対象クライアントにおいて、API実行前のQoS状態は以下のCMTSのコマンドで参照できます。これはすべてのトラフィックが上りと下りでそれぞれ1つのQoS(これをサービスフローと呼びます。)に割り当てられている状態です。
API実行後は以下のようにQoSが追加されています。
このように図2で示した流れのようにOpenDaylight に対してAPIを実行することで、PCMMを利用したCMTS / Cable Modem間でのQoS生成およびトラフィック分類を確認することができました。
まとめ
今回は、OpenDaylightに対して直接APIを実行して、PCMMモジュールを操作しました。しかし、実際に利用するとなると直接APIを実行するといったことはなく、自動化を含めた外部機器連携が求められてきます。
想定されるユースケースとして例えば、セキュリティ・DPI装置等で検出した疑わしいトラフィックがあった場合、その加入者のIPアドレス情報を元にOpenDaylightと連携する中間アプリでAPIを実行して、その加入者のモデムに対して動的にQoSを割り当てて、該当のトラフィックを抑えるといったことも可能であると考えます。
弊社では引き続きOpenDaylight を初めとした、CATVアクセスネットワークでのSDN連携について情報収集に努めて参ります。ご興味ございましたら弊社担当営業までお問い合わせ下さい。
参考文献
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執筆者プロフィール
大澤 能丈
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 応用技術部 コアネットワークチーム 所属
1999年 ネットワンシステムズ株式会社入社
応用技術部門にて映像配信やCATVインターネット製品の技術者として従事
- CATV総合監理技術者
- 情報処理「ネットワークスペシャリスト」
- 情報処理「情報セキュリティスペシャリスト」
- CCNP
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