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無線LAN機器に備わるアンテナの性能を理解するために必須の単位「dBi(デービーアイ)」

匠コラム
ネットワーク

ビジネス推進本部 応用技術部
エンタープライズSDNチーム
松戸 孝

本コラムでは、無線LAN機器に備わるアンテナの性能を理解するために必須である「dBi(デービーアイと発音)」という単位 について、極力、わかりやすくなるような解説に挑戦します。

自習のときに、各種の本や検索して出てくるWEBサイトの資料等で、自分なりに納得して割り切る際に、本コラムでの解説の表現が、少しでも役だっていただければ幸いです。

(1)無線LAN対応での dBi の登場例

(その1)
シスコシステムズ社製の無線LANアクセスポイント用の デュアルバンド(2.4GHz帯と5GHz帯の両方に対応) ダイポールアンテナ AIR-ANT2524DW-R の利得は、2.4GHz帯で2dBi、5GHz帯で4dBi である[1]。

(その2)
シスコシステムズ社製のIEEE802.11ac Wave2対応の無線LANアクセスポイントAIR-AP3802I-Q-K9には、新機能として、1つのAP3802I本体内で5GHz帯の2つの別の周波数チャネルの無線部が動作する機能(Dual5GHz帯モード)が実装されている[2]。

AP3802Iは、その本体内にアンテナを内蔵しているが、Dual5GHz帯モードにおける第1番目の無線部の内蔵アンテナ利得は6dBiであり、第2番目の同利得は5dBiである。

これら2つの内蔵アンテナは両方とも、水平面内(Azimuth)は無指向性であるが、一方、垂直面内(Elevation)は、単方向の指向性である。

そして、2つの内蔵アンテナにおいて、それらの利得の1dBの差(=6dBi-5dBi)は、垂直面内(Elevation)の単方向の指向性に違いを作り[3]、2つの特徴的な無線LANのサービスエリアを形成する。

即ち、AP3802Iを屋内天井面(無線LAN端末からAP3802Iが見える側)に設置した場合、Dual5GHz帯モードにおける第1番目の無線部は、利得が6dBiの内蔵アンテナによって、AP3802Iの直下周辺のやや狭い範囲(小セル、マイクロセル)を無線LANのサービスエリアに形成できる。

一方、第2番目の無線部は、利得が5dBiの内蔵アンテナによって、AP3802Iの直下から周辺のやや広い範囲(大セル、マクロセル)を無線LANのサービスエリアに形成できる。

(2)dBi(デービーアイと発音)とは?

(2-1)dBiとは、アンテナの性能を示す項目の1つである 利得 を表現するときにつける単位です。

(2-2)アンテナは、無線LANアクセスポイントや無線LAN端末の送受信回路と空間をつなぐためのインターフェース装置です。アンテナは、無線LANアクセスポイントや無線LAN端末の送信回路からの送信データ信号の高周波電力を電波に変換して空間に放射します。また、アンテナが空間に放射された電波を受けると、電波は受信データ信号の高周波電力として変換されて、無線LANアクセスポイントや無線LAN端末の受信回路へ導かれます。

(2-3)このとき、アンテナが特定の方向へ電波を集中して放射したり、または、特定の方向から電波を受けたりする能力を、指向性と呼びます。指向性はアンテナの周囲で立体的に変化するので、全方向(上下左右360度)に均等に指向性を持った理想的な基準アンテナ(等方性アンテナ:Isotropic antenna)に対して、どのくらい指向性が凹凸しているかを把握します。その指向性の最も大きな凸部分における電波を送信する能力、または、受信する能力によってアンテナの利得が定義されます。

つまり、アンテナの利得は、次式で表現できます。

アンテナの利得
=指向性の最も大きな凸部分で送信する電力 / 等方性として送信する電力
=指向性の最も大きな凸部分で受信する電力 / 等方性として受信する電力・・・(式1)

なお、アンテナの指向性は、凸の部分ができれば、必ず凹の部分も形成されます。等方性アンテナよりも、電波を送受する能力が大きくなる指向性の部分ができれば、必ず、電波を送受する能力が小さくなる指向性の部分もできています。

⇒理解を助ける想像イメージの一例
理想的な基準アンテナ(等方性アンテナ:Isotropic antenna)の指向性が全方向(上下左右360度)に均等であるというイメージは、例えば、粘土でできた球形(但し、粘土の体積は一定)に相当します。その粘土の球形を少し押しつぶすと、球形が凹凸をもった別の形に変形します。その別の形が、あるアンテナの指向性に相当し、その最も大きな凸部分における球形の中心からの距離と、球形の半径の比が、そのアンテナの利得に相当します。少し押しつぶされた粘土の形は、最初の球形よりも凸の部分ができていると同時に、最初の球形よりも凹の部分もできていることは、容易に想像できましょう。

(2-4)上記の(式1)は、2つの電力の比なので、その比をさらに特別な計算で変換して表現することで、単位は、dB(デシベル、または、デービーと発音)となります。なお、dBについては、関連記事[4]のコラムもご参照ください。

そして、さらに、
(式1)の 分母となる電力 = 基準となる電力 = 全方向(上下左右360度)に均等に指向性を持った理想的な基準アンテナ(等方性アンテナ:Isotropic antenna)で送受する電力であること を明確に示すことが必須ですので、dBに添え字の”i”をつけて、dBi と表現します。発音は、デービーアイ です。添え字の”i”は、Isotropic の頭文字の”i”を意味しています。

(2-5)dBiを単位とするアンテナの利得のことを、アンテナの絶対利得 と呼ぶこともあります。

(2-6)利得が0dBiは、等方性アンテナそのものの利得。
指向性が全方向(上下左右360度)に均等である等方性アンテナ、つまり、全方向(上下左右360度)に対して無指向性アンテナの利得は、上記(式1)から 0dBi になることがわかります。
(理由)
この場合、上記(式1)の分子は、分母と同じですから、比としてのアンテナの利得は1であり、これは上記項目(2-4)によりデシベル(dB)では、0dBとなります。さらに、分母の基準アンテナが等方性アンテナ(Isotropic antenna)であることを明確に示す必要があるので、最終的に、0dBi と表現します。

(3)無線LANでの一例の解釈

上記項目(1)(その1)の場合
AIR-ANT2524DW-Rの2.4GHz帯での利得が2dBiであるとは、AIR-ANT2524DW-Rの2.4GHz帯での指向性の最も大きな凸部分での電波を送受する能力が、等方性アンテナに比べて、約1.6倍大きいという意味になります。
同様に、AIR-ANT2524DW-Rの5GHz帯での利得が4dBiであるとは、AIR-ANT2524DW-Rの5GHz帯での指向性の最も大きな凸部分での電波を送受する能力が、等方性アンテナに比べて、約2.5倍大きいという意味になります。

上記項目(1)(その2)の場合
AIR-AP3802I-Q-K9の内蔵アンテナのDual5GHz帯モードにおける第1番目の無線部の内蔵アンテナ利得が6dBiであるとは、
その内蔵アンテナの5GHz帯での指向性の最も大きな凸部分での電波を送受する能力が、等方性アンテナに比べて、約4倍大きいという意味になります。
同様に、AIR-AP3802I-Q-K9の内蔵アンテナのDual5GHz帯モードにおける第2番目の無線部の内蔵アンテナ利得が5dBiであるとは、その内蔵アンテナの5GHz帯での指向性の最も大きな凸部分での電波を送受する能力が、等方性アンテナに比べて、約3倍大きいという意味になります。

まとめ

無線LAN機器に備わるアンテナの性能を理解するために必須である「dBi(デービーアイ)」という単位 について、極力、わかりやすくなるような解説に挑戦しました。本コラムが、アンテナの性能をより適切に理解することに貢献できていれば幸いです。

関連記事

参照 Aug.17, 2016.

参照 Aug.17, 2016.

参照 Aug.17, 2016.

参照 Aug.17, 2016.

執筆者プロフィール

松戸 孝
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部
応用技術部 エンタープライズSDNチーム所属

無線LANの製品担当SEとして製品や技術の調査、検証評価、技術者の育成、及び、提案や導入を支援する業務に従事

  • 第一級無線技術士
  • 第1回 シスコ テクノロジー論文コンテスト 最優秀賞
  • 第2回 シスコ テクノロジー論文コンテスト 特別賞
  • 第3回 シスコ 論文コンテスト 特別功労賞

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