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Beyond 100G をめざすオプティカル技術

匠コラム
ネットワーク

ビジネス推進本部 第1応用技術部
コアネットワークチーム
関原 慎二

現在、ハイエンドルータにおいては100GbEインタフェースが増えつつあります。また、光通信ネットワークにおいても100GbE信号の波長多重を行うWDM装置が導入されています。2015年のコラム”Road to 100G”では100G技術の概要についてお話しをしました。 今回はBeyond 100Gとして400G(ギガ)~1T(テラ)へと発展を続ける最新のオプティカル技術トレンドについてお話ししたいと思います。
(1)Beyond 100Gに向けた多値符号化通信
(2)Beyond 100Gに向けたマルチコアファイバー
(3)Beyond 100Gに向けたマルチモード制御

(1) Beyond 100Gに向けた多値符号化通信

Road to 100Gでお話ししたように現在、100G光伝送技術として図1に示す100Gデジタルコヒーレント変調/DP-QPSK変調が使用されています。これは2つの光の波(X,Y偏波)を使用してそれぞれ2ビットの情報を与えて通信を行うものです。この2ビットの情報を与える符号として4値符号であるQPSK符号を使用しています。このように2ビットの符号化と2つの光波により、一度に4ビットの変調を行うことで、データのボーレートを約28ギガまで下げることが可能になり、FPGAなど電子回路の処理速度を抑えることができます。100Gビットを超える光伝送システムではこのように電子回路の処理速度を考慮し多値符号化が進むと考えられます。

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Beyond 100Gで予定されるコヒーレント多値変調を図2に示します。一方、400Gイーサネット(400GbE)においても多値符号化が使用される予定です。2015年7月のIEEE802.3bs/400GbEタスクフォース会合でシングルモード光ファイバーを使用した10kmまでの伝送方式として今までのNRZ符号変調(2値変調)と異なる4値変調方式であるPAM4(PAM:Pulse Amplitude Modulation)が採用されました(図3,図4)。

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このように周波数あたりの情報量を大きくできる多値符号化ですが、ノイズに対して弱くなるというデメリットがあります。図2に示すように多値符号の値が多くなるにつれ光信号とノイズの比率であるOSNRの相対値は劣化しノイズに対して弱くなり長距離伝送には不向きになります。一方、多値符号化を行うと周波数の利用効率が上がり光波長の帯域を有効活用できるメリットもあります。そこでBeyond 100Gの光通信ネットワークでは長距離伝送を行う波長には多値数の少ないQPSKなどの符号を使用し、短距離伝送を行う波長には光スペクトラムを狭くできる多値数の多い16QAMや32QAMなどの符号を混在させて波長多重を行うことが検討されています。このようにフレキシブルに使用する波長を動的に変化させる技術をフレキシブル・グリッドとも呼ばれています。尚、前述した400GbEではPAM4符号による多値化を行うことでOSNR比(信号雑音比率)が劣化する為に、イーサネットとしては初めてFEC誤り訂正符号が採用されました。

(2) Beyond 100Gに向けたマルチコアファイバー

キャリア網で使用される光伝送システムでは現在、100Gを80波でWDM伝送する装置も導入されています。今後、400G~1Tと大容量高速化が進むにつれ光ファイバーそのものに限界が出てきます。それは光ファイバーのコアに入力される光パワーがどんどん増加していくと非線形効果により光信号が歪んだり、ファイバーヒューズというプラズマ現象が発生し光ファイバーが広範に渡って焼損したりするためです。一般に80波を使用するWDMでは光ファイバーに入力される光パワーは約100mW(約20dBm)となりますが、ファイバーヒューズは1200mW程度で発生することが確認されています。その為に1本の光ファイバーで使用可能な伝送容量は100Tビットが限界とされ、このままWDMシステムの大容量高速化が進むと2020年を過ぎた頃にその限界が来るとも言われています。

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そこでマルチコアファイバー(MCF: Multi-Core Fiber)を用いた空間分割多重伝送(SDM: Space-Division Multiplexing)の開発が行われています。従来の光ファイバーでは光信号の通り道として1つのコアを使用しますがマルチコアファイバーは図7に示すように1本の光ファイバーの中に複数のコアがあり、これらを使用して通信を行います。コア間の信号クロストークや複数のコアを正確に接続する技術、長距離伝送を行う際の増幅技術など様々な課題に対して技術開発が行われており、1本の光ファイバー内に19個のコアを使用したSDM伝送実験も行われています。マルチコアファイバーの登場により1本の光ファイバーで1000Tbps(1Pbps)を超える通信が夢ではなくなりつつあります。

(3) Beyond 100Gに向けたマルチモード制御

マルチモードファイバーと言えばデーターセンタ内のルータやスイッチ間接続など短距離通信に使用されています。これはマルチモードファイバーでは光信号がファイバー内を伝搬するモードにより到達時間が異なりその結果、受信した光信号に歪が発生して伝送距離が制限されてしまうためです。(モード分散による現象)しかし、近年の研究から無線LANなどで開発されたMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術とデジタル信号処理を適用することで受信した光信号のモード分離が可能になりました(図8)。それぞれのモードを通信に使用したモード分割多重通信の研究が行われており、マルチモードファイバーで6つのモードを使用した伝送実験も報告されています。

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※WDM:
1本の光ファイバーに波長の異なる複数の光信号を波長多重して伝送する装置。
※DP-QPSK:Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keyingの略
100Gデジタルコヒーレントで使用される変調方式。
※QAM:Quadrature Amplitude Modulationの略
直角位相振幅変調と呼ばれ振幅及び位相を変化させてデータを送る方式で、16QAM、64QAM、128QAM、256QAMなどがある。
※MIMO:Multiple Input Multiple Outputの略
MIMOはもともと複数のアンテナを使用し送受信データの帯域を上げる無線通信技術。
複数の光信号の伝搬モードを組み合わせて光ファイバーでの伝送帯域を飛躍的に上げる技術として注目されている。
※IEEE802.3bs
IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)は電気・電子分野における国際専門組織。IEEE802.3bsでは100G/400Gの超高速伝送方式の標準化が行われている。

まとめ

Beyond 100G をめざすオプティカル技術として3つのトレンドについてご紹介しました。
多値符号化やフレキシブルグリッドはWDM製品として実装、導入も開始されています。
光ファイバーのマルチコア、マルチモード制御などによる空間分割多重方式も登場し、100G WDMネットワークでのフィールドトライアルも開始されています。2020年ごろ商用化が見込まれる5Gモバイル時代の到来やクラウドネットワーク拡大に向け光通信ネットワークの超高速大容量化はそのブレイクスルーとして期待されています。

執筆者プロフィール

関原 慎二
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 第1応用技術部 コアネットワークチーム所属
通信機メーカ入社後、キャリア向け伝送装置のハードウェア開発、LSI設計等に従事
ネットワンシステムズではオプティカル製品(FTTH、WDM)の評価、検証及び案件技術支援を担当

  • ADVA Certified Expert #083193
  • 工事担任者デジタル1種

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