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第5回 ワークスタイル変革の効果を定量化するネットワンROI測定法について

匠コラム
働き方改革

ビジネス推進本部 第2応用技術部
EUCチーム
玉井 真

構成

  • 効果測定・評価を実施する体制
  • フェーズ分けの考え方
  • 効果測定に必要な5つのデータ項目
  • 弊社事例でのROI算出結果

ワークスタイル変革に取り組むには、様々な面での投資が必要になる。しかし、ワークスタイル変革に取り組んだことよる効果を定量的に可視化しなければ、継続した変革を推進するために必要な戦略的な投資を検討することは困難と考える。
今回は、ネットワンシステムズが実施したROI測定の考え方、その方法、実際の測定結果について紹介する。

効果測定・評価を実施する体制

ROI測定に必要な様々なデータを収集するためには、情報システム部門などの1部門で対応するには不可能である。
交通費などの経費を確認するには財務経理部、社員構成や社員数などを確認するには人事部、システムに関する投資額・運用費については情報システム部、コーポレートガバナンスやリスク管理についてはCSR部門、と言ったように社内の複数部門が関係してくる。よって、ROI測定については部門横断のプロジェクトチームを立ち上げ、全体方針を決めて、取り組む必要がある。
当社のケースでは、ビジネス推進Gが方針を起案し、各部門への協力依頼を行う形でプロジェクト遂行した。
プロジェクト全体の流れは以下となる。

効果測定・評価を実施する体制

フェーズ分けの考え方

当社が過去に実施した施策から、現在の環境へ移行するまでを3つのフェーズに分けることにした。3つのフェーズに分けた理由は、オフィス環境・ICT環境などがどのフェーズにあるのかを考慮して、そのフェーズでの効果測定・分析する必要があると考えたからだ。

フェーズ分けの考え方

物理オフィス

これは、本格的な「ワークスタイル変革」を実施する前のフェーズである。社員一人一人に固定席、デスクトップPCと固定アナログ電話を貸与、また、社外で利用するためのノートPC、携帯電話を貸与するという環境。就業時間も、保守部門を除き、9:00~17:30という勤務体系の就業環境。

移行期オフィス

「ワークスタイル変革」の取り組みを開始し、全社仮想オフィスへの移行中のフェーズである。フレックスタイム制度、テレワーク制度も利用も開始された。トライアルユーザを対象にした仮想デスクトップも導入したが、デスクトップPC(ファットクライアント)

仮想オフィス

全社VDIへの移行が完了し、デスクトップPCは全て回収。ビデオ会議、Web会議の環境も整備され、社員はオフィス以外の環境(自宅・外出先・出張先など)からオフィスと変わらない働き方を実現。

効果測定に必要な5つのデータ項目

各フェーズのROIは以下5つのメトリックで測定した。

① CAPEX(設備投資)
② OPEX(運用費)
③ リスク
④ 生産性
⑤ イノベーション

CAPEX、OPEXはROI測定に通常用いられる項目だが、当社の場合はOPEXに社員の工数(時間×給与)も含めている。

リスクは過去に発生したセキュリティ事故に関する対応額、更に、自然災害(台風など)などで通勤が出来ない時に業務継続が行えず、こちらの損失金額を算出すると③のリスクは膨大な数字になる。
ただし、VDI、ビデオ・Web会議、チャットツールなどを使って自宅で業務が行えるため被害額は大きく抑えることが出来た。リスクは上記BCPの観点だけでなく、情報漏えいも大きく関わってくる。情報漏えいの事故が発生すると、その対応額だけでなく顧客からの信頼損失という、会社存続にも影響を及ぼす大きな事項だ。

④の生産性は、同じことを行う場合にどれだけの時間で実施できるかを金額換算した。
いつでも、どこでもコミュニケーション、業務が行える環境は生産性向上に寄与するデータとしてROIに加えた。⑤のイノベーションは、社員満足度の向上、顧客接点の向上、自社イメージの向上など数値化しにくいものだが、その効果をROIに含めることは、ワークスタイル変革全体の価値を算出する上で必要と考える。

これら5つのデータ項目・分類が決め、このデータを扱うであろう部門に数字を提示してもらった。並行して、数値化のロジック、データの抽出期間などを検討しROIを纏めていった。

弊社事例でのROI算出結果

弊社事例でのROI算出結果

当社の実践したワークスタイル変革の効果は上記の数値が算出された。
物理オフィスから移行期オフィスへフェーズが変わる期間では、CAPEX・OPEXがマイナスの値となっているが、仮想オフィスのフェーズでは、プラスの値となる効果が出ていることが分かる。物理オフィスから仮想オフィスへの移行期間をいかに短縮することがプラスの効果を上げられるポイントとなる。

CAPEX

物理オフィスから移行期オフィスへのフェーズで、仮想デスクトップ(VDI)基盤への投資が大きかったため、効果は一時的にマイナスなっている。ただし、VDIが全社展開が完了する仮想オフィスのフェーズでは、VDI化により社員に配布していた複数台のPC端末の数を大きく減らし、その結果ソフトウェア・ハードウェアのコストを大きく削減出来た。

OPEX

物理オフィスから移行期オフィスへのフェーズでマイナスとなっているのは、VDIへの接続をデスクトップPCから行っており、ファットクライアントとVDIの並行運用を行った。

また、VDIへの移行期間となるため、問い合わせ対応が多く発生し、一時的にヘルプデスクを増員するなど運用コストが多く発生しマイナスとなった。仮想オフィスのフェーズになると、社員自身が実施していたWindowsアップデートや、ファットクライアントの故障対応などに関わる情報システム部の運用工数が、VDI化により大きく削減されプラス効果が出ていることが分かる。

リスク

大きく効果を出したのは、セキュリティリスクの軽減である。VDI化により、社員は画面転送で自身のデスクトップに接続するため、VDI移行前のようなPCローカル環境でデータを扱う機会は大きく減り、それに伴う外部記憶媒体・PC紛失などの情報漏えいリスクへの対応に大きく効果が出ている。データを持ち出さない(DCの仮想デスクトップから)事によるセキュリティリスクの軽減である。また、現在深刻な問題となっている標的型攻撃などのセキュリティ脅威に対しても、VDI化環境では有効な対策を図ることが出来るというメリットは大きいと言える。

台風などにより交通機関がマヒした場合など、社員は出社できなくても自宅で業務が出来るようになったため、業務継続リスクの面でも効果を出している。

生産性

効果が大きかったのは、テレワークの活用による残業時間の削減が図れたことである。移行期オフィス以降では、外出先、移動先の合間時間で業務を実施することができるため、オフィスに戻る必要の無い業務をリモートで実施することで、残業時間の削減が出来た。残業など長時間労働は会社側にとっても社員にとっても大きな負担となる。残業時間を減らすことで、生産性を大きく向上出来た。

イノベーション

顧客接点の拡大、企業イメージ向上、社員満足度の向上、雇用の継続など金額に換算しにくいが、経営戦略上、継続的に測定していく必要があると考える。特に、社員満足度の向上については、ROIを測定する上で重要なポイントと言える。トラブル発生時の一次対応を社員が自宅からでも出来るようになったという、業務負荷の低減に繫がるケースや、フレックスを活用して子どもの保育園送迎が出来るようになったという、家事・育児への積極的な参加が出来るようになったケースなど、社内アンケートの結果からも高い社員満足度となっている。

当社で実践しているワークスタイル変革が、数値としてその効果を示すことは大きな意味があると考える。それは、当社の実践したことをリファレンスとしてお客様に紹介する際、大きな説得力を持つということである。

今回初めて大規模に効果測定を実施したが、実際の作業内容は複雑であり膨大な数値を纏めるという簡単な作業でないことを痛感した。社内の多くの部門と連携してデータ収集・分析を行い、アウトプットに纏めるという、当社のROI測定の手法が、今後ワークスタイル変革に取り組もうとされている方々への参考になれば幸いである。

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